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10年前

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去年に引き続き、河合塾の彫刻科のみんなの動物塑造に呼んでもらって行ってきました。

浪人時代はそれはそれはつらいものでしたが、それでも私は予備校が大好きでした。
ちょうど10年前、みんなと同じく朝から晩まで美術に明け暮れる日々でした。
大好きな美術の勉強を一日中できるというだけで、楽しくてしょうがなかったのを覚えています。

毎日すこしづつよくなって行く自分を実感でき、見た事も無いリアリティに出会い、見るものすべてが美しく見えて行く気がしました。
粘土をさわっていると、この粘土のなかに、過去の先輩の汗と涙と努力が練られているんだな、といつも、土に励まされていました。
粘土室を一人掃除しているだけで、粘土の神様が自分におりてくる、と本気で信じていました。

努力のまっただ中にいるみんなに会うのは、私にとっては何より嬉しい時間です。
おそらくどんな美術館よりも、すごいものが生まれる可能性のある場所です。
その事に気づいたのは、だいぶんと後になってからでした。

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さくらちゃんのつくったアリクイさん

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ゆみちゃんのつくった絵本の中のような動物の風景

今時の作品を見に行くよりよっぽど、みんなの作品はすごい、と私は思います。
純粋に、真剣に、謙虚に、つくっているからです。
彫刻家、高村光太郎もかつて自分のもとへ首像を見せに来た学生に言いました。

「学生時代の作品ってのは、たいていどれも傑作だよ、
 君の作品は社会に出てから一度は悪くなるだろう。
 あれこれ考えて、道を見失うこともあるだろう。
 この今の制作の気持ちを、忘れないようにしなさい。」

私は、間違えずに進めているんだろうか、と改めて自分に聞いてみました。
もっともっと、真剣に素直に謙虚に、ひとつの仕事をするべきではないか、
いつも初心でいられているかどうか、
広い視野で見れているだろうか、
みんなからたくさんの事を教えてもらって、私の方が勉強になって帰ってきました。

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一枚の絵を描く時、最初は勇気がいります。
でも自分の目を信じていれば、道を間違う事はありません。
美しいモチーフが見えているなら、目は正しく働いています。
描けないのは、思うように動いてくれない手のせいです。
指令を出している脳のせいでもあります。
自分の目を信じて、素直に、真剣に、謙虚に、手を動かして行く。
間違いだと思ったら今すぐ大きく解決する。
一枚の大きな大きな絵を描くように、一生を過ごして行けたらなと思いました。
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サルから進化して来た手、宝物の手。この手でつくって行くものが、いいものでありますようにと、願いを込めてデッサンをしました。
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ジプシーさんの彫刻も、少しばかり、進みました。
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by m_kirin30 | 2009-10-30 00:33 | すてきなところ | Trackback | Comments(6)

すすむ

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秋になりました。
最近なんだか妙に、できないことがあるのって楽しい、と思っています。

10代の頃は、嫌いだった経済の勉強や、英語の勉強も、最近また始めました。
一人で乗れなかった車の運転も、パソコンの新しいソフトの勉強も、始めました。
だんだんと、彫刻、というのが職業として自分に染み付いてきたので、もしかしたら少し広い視野で、勉強をする余裕ができてきたのかもしれません。

その新しい勉強のどれもに、彫刻とも共通するキーワードがあることに気がつきました。

「まず、今を壊してすすむ勇気」であるという事です。

外国の人と、間違ってもいいから話す勇気、一人で運転する勇気、新しい事をするときや、新しいところへ行くと、とても勇気がいります。だけど緊張も必要です。
やめておけば、現状は維持ができて恥をかかずに失敗せずにすみますが、それでは一生、できないままです。
だけど勇気を持って、やってみれば、以外と何のことはない、できそうなものだったりします。

彫刻も、毎回それの連続です。
イメージをしっかりと見据えて、潔く形をおとす勇気、だけどそれは、無謀とは違う、あらゆる緊張や冷静な判断をふまえた上での一刀です。

アトリエでひとり、クスノキまみれになって木とモチーフと向かい合っているとき、いつも、勇気があれば、もっと先へ進めるのに、と思います。
今のリアリティを壊してでも更なるリアリティをつくりだす、そのための勇気を、いつも木と自然からもらってきました。

どんな勉強でも同じなんだな、と改めて感じました。
できないことがあるのは、楽しい。
できないことがやれるようになって来た時の楽しさや喜びは、いくつになっても変わりません。
できない事なんて、無いのかもしれません。
勇気があれば、何だってできるんだと秋の夜長にしみじみ虫のように思います。

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次のモデルは、このジプシーさん、というオランウータンです。
モナリザのようなこの微笑みを、つくることができるように日々格闘中です。
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彫刻の仕事の段階のうち、この、粗取りを終わった後のデッサンの始まり、の部分が一番緊張と勇気がいります。
大きくとりすぎると取り返しがつかないし、小さくちまちまやると生命力がなくなっていく。
ここから、長い長い勝負が始まります。
決して勝つ事にできない自然という相手に戦いを挑み続けるような気分になります。
まだまだデッサンの鍛錬が必要だなと思いました。

ひといきついて、

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さすがは食欲の秋、私は彫刻であまいものをたくさんつくってしまいました。
この甘いものたちは冬の甘い季節に、名古屋の ミュシカ さんという素敵なお店で展示させて頂こうと思っています。

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バレンタイン前には食べられない木彫りチョコをつくろう会もしようと思っているので、彼や旦那様を木彫りでだましたい方はぜひ遊びに来てくださいね!

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のりものシリーズも続々追加中です。
一月は楽しい展示ができればなと思っています。
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by m_kirin30 | 2009-10-17 23:59 | 日常 | Trackback | Comments(12)

美術のちから

長期取り組んでいた小児病院のカウンターに置く彫刻の仮設置を行ってきました。
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私は、4歳のとき心臓の病気で入院していたので、子供病院にはとてもお世話になりました。
生まれてから一番最初の記憶が、手術台だったというくらい、衝撃的な記憶ですが、それでも病院は楽しかった思い出があります。

神戸の須磨の子供病院は、図書室や駆け回って遊べる部屋もあって、お部屋にはいつも看護士さんたちの手作りの工作が置いてありました。

私は病室をぬいぐるみでいっぱいにしていました。
その頃から毛の生えた物が好きだったのかもしれません。

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先生も優しくて大好きでしたし、完治して以来、ありがたいことに、病院にほとんど行かない元気な大人に育ちました。

子供の気持ちを楽しくしてくれる病院は、どんなお薬よりも元気になれるのかもしれません。
なのでこの仕事は、過去の恩返しのような気持ちで取り組みました。

ひとときでも、心が楽しくなってくれたらいいなと思います。
この病院に携わったたくさんの方々の想いが、とっても伝わるすてきな場所でした。

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人を喜ばせたり楽しませたりするためにある美術。その根っこのところを見失い、自分のため、になるととたんに作品はだめになってしまいます。

けれど美術は大学に入るとき自分のためにだけ戦わないと行けません。
私は負けず嫌いのくせに、最後の最後で戦えませんでした。
勝ちたいのなら犠牲を出してでも勝たなければならない。
けれどよわい犬も好きだし、負け犬でもいいか、と思ってしまいました。

だけど今は、間違っていたなとおもいます。

私のために応援をしてくれる人たち、サポートしてくれる人たち、期待してくれていた先生や後輩たち、たくさんの人をがっかりさせてしまいました。
それは自分の事しか頭に無く、自分が負けてもいいや、誰にも迷惑はかけない、と思っていたからかもしれません。
本当は、私と関わってくれたすべての人たちのためにも、決して負けてはいけない勝負だったんだと思います。

誰かを喜ばせるために作る美術には、力が宿ります。
どんなに小さい彫刻にも、力が宿っていればそれは大事にしてもらえて、また誰かの力になり、つながって、とても大きなエネルギーの固まりのような物になります。

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美術は、自分一人の力でできる物じゃない。あらゆる物の力を借りて、だけど自分の手にすべてを集め、作って行く物なんだなとまた感じました。

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工芸は、私なんかが手を出してはいけない実用性、という物を考えると奥深い世界ですが、楽しめる彫刻カトラリーとして、一月に展示会をすることになりました。
実用性はまだまだですが、少しでも使い心地がいいものになるように日々改良しています。
おかしな彫刻のついたカトラリーに興味のある方は、ぜひ足を運んでみてくださいね!
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by m_kirin30 | 2009-10-07 09:42 | 日常 | Trackback | Comments(6)