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彫刻物語。

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ミュシカさんで、北欧の森イベントが始まりました。
名古屋市一社にあるこのお店は、オーナーさんの宝箱の中身のよう。
私はいつも展示会をさせてもらうたび、宝物の一部に入れてもらったような気がして、期間中嬉しくて仕方ありません。
今回は仲良し子供服作家の井上アコさんと一緒に展示していて、私は幸せな一週間を楽しませてもらっています。

展示会は、お祭りのよう。
孤独との戦いだった日々の制作からぬけだし、たくさんの人とめまぐるしく出会うフェスティバル。
普段ほとんど人と会わない生活をしているので、目がぐるぐる回るようです。
人見知りなので、もし来てくださった方、目を合わせられなかったらごめんなさい。

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今回も、すでにたくさんの方が手に取り、嬉しそうに小さな彫刻達を連れて帰ってくださっています。私は心の中で、感動し、作る喜びをかみしめる日々です。

自分の作った彫刻が、誰かのたからもののひとつになれたら、どれくらいすごい事なんだろうと思います。私もたからものはいくつかありますが、たからものにはすべて、物語が伴っている。
思い出がある動物や、犬や猫たち、おさるたち、
みんな、たったひとり、この世界に生きていた友だち、
その子達を、いつでも身につけて歩けたらいいな、と、そんな思いで、今回出会った動物たちを木彫りのペンダントにして作品にしました。
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身の回りの全てのものたちが、思い出でいっぱいになって行ったらいいなと思います。
このペンダントを付けて、たくさんの景色を小さな動物たちと一緒に見てほしいなと思います。
たくさんの哀しみや喜びを共にして、
たくさんの出会いと別れを共にして、
たくさんの場所へ一緒に旅をして、
一緒に、年を重ねていってくれたらいいなと思います。
そんな思い出のたからものの一部に彫刻がなれたら、彫刻も幸せでしょう。

今回、こんな風に思いました。
私が彫刻を作っているだけじゃなく、
その前後にストーリーがあって、私はその過程の一部分なんだという想い。
まずこの世界に生きている愛しい動物たちがいる事で、私は彫刻を作ることができる。

そして、その彫刻を手に取ってくださる方とともに、その子の一生の彫刻物語が始まるんだ。
そんな風に思えて、
自分との戦いのこの仕事も、まだ見ぬ誰かの物語の一部になれるのであれば、どんな孤独にも耐えられる。すべては、美しい物語のためにあるならば。

そんな出会いが今回もたくさんある事を祈って、日々制作に明け暮れています。
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by m_kirin30 | 2010-08-29 22:03 | 展示 | Trackback | Comments(4)

なかまたち

旅が好きです。
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一人スケッチ旅行がほとんどでしたが、この前はデッサン合宿に仲間達と農家民宿 源さんにお邪魔しました。
民宿では自炊、イベントもしおりも自分たちで作り、オーナーさんとも一緒に遊んだりしながら楽しい時間を過ごし、時間が空いたらドローイングをしました。

美術はひとりぼっちの多い仕事です。
大学にいる時はたくさんの友だちと同じアトリエで制作しますが、それでも卒業制作は、たった一人です。誰も一緒に作ってはくれないし、自分一人の力で作品は立ち上げなければならない。
一生、この仕事は孤独との戦いのような気もします。
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でも、今回の旅は美大を出たのは私一人、あとのみんなは、美術が心から好きで、絵を描いたり、美術館に行ったり、もの作りをしたり、そんななかまたち9人で行きました。

みんな、美術に対しての想いがとても純粋です。
心底、美術が好きでいてくれる。
絵を描く事を、難しいながらも楽しんでくれてる。
私はどうか。
上手く描こうと力が入っていないか。
純粋にもの作りを楽しめているか。

私のような仕事は、だれも叱ってくれません。
ひとりぼっちなので、自分が自分を戒める以外、一人歩きしていても注意をしてくれる人がいません。その中で、わがままになり、協調性がなくなり、自分本位に進んでしまったりします。
だけど、叱ってくれなくても、笑ってるみんなを見ていて、ものすごく大切な事を学びました。
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それは、美術は人を楽しませたり喜ばせたり切なくさせたり、感動させることができたり、
見る人にとって、「いいこと」であるためにはじまったものなんだという事。
そのための手段は完全に自由自在であり、なにかの方法にとらわれなくてもいいんだという事。
美術を学ぶ事は、人生を学ぶ事そのものだと言う事。

ロダンの遺言のなかに、こんな一説があります。

「若者達よ、真実であれ。下らなく正確であれと言う意味ではない。
 あなたの真実の感覚が、新しいものであれば、最初は理解されないであろう。
 しかし、やがてあなたには味方が現れるだろう。
 なぜなら、ひとりの人間にとって深く真実であるものは、
 全ての人にとっても、そうであるからである。

 大切なのは、感動し、愛し、希望し、ふるえ、生きている事である。
 芸術家である前に、人間であれ!」

本当に美術を共に楽しんでくれる仲間は、私にはどんな宝物よりも価値のある、人生で一番欲しかったものなのかも知れません。
そんななかまたちに出会えただけで、私は道を間違わずに生きて行ける、
みんなが喜んでくれるものを、作ればいいのだ、そう、思えば、
大好きな人たちを、笑顔にする作品が、作れる気がしました。

その笑顔がまだ出会っていない誰かにも伝わり、やがてはたくさんの人に幸せを運ぶ彫刻が作れたら、私はそれが、人生の目標なんだと思います。

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自分の彫刻は、分かってほしい事が多いために、言葉が多すぎたのかな、とおもいます。
無理に難しい言葉を使って、それらしく見えたり、感心させたり。
そんなもの、こころに感動を残す事は決してありません。
「すごいね」で、おわります。

もっと、一刀一刀、彫刻のことばを、選んで語ろうとおもいます。
なるべく、ひらがなのような、ことばで。
シンプルに、やわらかく、ゆるく、あたたかく。
そんなものを、つくっていきたいなと思いました。
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実り多き夏も終わり、展示会が続き、今年の秋は、まさに、芸術の秋になりそうです。

名古屋市 一社駅にあるミュシカさんで今週末から、木彫りのアクセサリーや彫刻を展示させて頂きます。

そのあとは、東京で、グループ展「アズキムシの夏休み」と
9月末は個展 「beautiful friend」が開催されます。

9月にたくさんの人が彫刻に触れ合ってくれるといいなと、願いを込めて。
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by m_kirin30 | 2010-08-24 08:51 | すてきなところ | Trackback | Comments(4)

きえない。

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お盆には死者が帰ってくると言います。
私のもとへは、親友や、数えきれないくらいの虫たち、犬のともだち、ネコ、さる、たくさんの動物たちでにぎやかになりそうです。
死んだらどこへ行って何になるんだろう、といつも思います。

捨てたって誰かが拾う。
燃やしたって灰が残る。
隠したって誰かが見つける。
忘れたって記憶が残る。

何かを、完全に消す事なんて宇宙にはできない、ブラックホールの中にだって、おびただしい星の命の結晶が詰まっているのです。
物質は、決して消えない。

一枚の白い紙の前に向かうと、いつも、その白の奥に脱色された記憶の事を考えます。
この白い紙になる前は、きっとおおきな樹だったり、物質だったりしたんだろう。
筆も、私の使っているのはコリンスキー。いたちのような生き物です。
きっと、精一杯の命を生きて、狩られて、筆になったんだろう。
楽器も動物たちです。豚やヤギの腸や、ウマのしっぽ、みんな、何を食べて、何を感じて、何におこって、どうやって死んで行ったのか、その事を考えずにはいられません。

白い紙を前にして、絵を描く前、何か神聖な気持ちになるのは、そのためかもしれません。
楽器があんなに美しい音を出すのも、理由があるのかもしれません。
いつも絵を描く前、私はひと呼吸、祈りを捧げます。
紙になる前の、何かだった頃の、その命に、敬意を込めて。
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寺山修司さんの詩で、私の親友が好きだった詩があります。
「思い出さないで」 というタイトルのたった3行の詩です。

「私を思い出さないで。
 思い出されるためには、
 一度、忘れられなければならないのが、いやなんです。」

親友は、約2年前に亡くなりました。
私は地元を離れ、愛知で暮らしていたので、一年に2〜3回しか会う事がなかったのですが、浪人時代からいつも一緒にいて、私のすべてを知っていてそれでもいつも応援してくれる、たった一人の存在でした。美術の話、人生の話、夢の話、そのどれもを鮮明に覚えています。

29才という若さでこの世を去った親友、けれど、生きた長さなんて、人と比べれば短いだけで、彼女は彼女なりの一生を過ごしたんだとも思います。
かけた時間でなく、内容なんだと思います。
彼女が去って、私は一人が寂しい事を初めて知りました。
会わないのと、会えないのは、違う。けれど、
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「出会うという事はきっと、楽しさもかなしさも、同じだけおこるってことを、かくごしておかなきゃいけない、それでもぼくは、であえてよかったと、おもうよ。」

これは、「神様のないた日」という絵本の中のネコが語ることばなんですが、わたしはいつでも、こう思っています。死ぬまで味方だよ、ではなく、死んでも味方だよ、と思っています。

どんなにかなしい結末でも、思い出は消すことができない、けれど、共に過ごした楽しかった時間だけで、もう充分に幸せをもらっているんだから、それはそれはすばらしい事なんだと思います。
その消えない楽しかった思い出を、彫刻にしていきたいな、絵にしていきたいな、とおもいます。
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ツバメがなにより好きだった親友。
正確には、山崎まさよしさんの、「ツバメ」という唄が好きで、ツバメが好きだと言ってました。
親友へ、私の先輩の、彫刻家 大森暁生さんの作品を、プレゼントしました。
といっても、うちのアトリエに飾ってあります。
いつでも飛んでいるこの作品を見ると、親友に励まされているようで、私はがんばることができます。どこか外でも、ツバメを見ると、心が躍ります。
どうか、幸せに、飛び回っていますように。

消えなかった、消せなかった思い出を、形でのこしていく、美術。
ひとまわりもふたまわりも成長して、この夏は、きえないものを、たくさん残して行きたいなと思いました。




by m_kirin30 | 2010-08-14 09:22 | Trackback | Comments(8)

チョウコク。

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はじめて木を彫ったのは、いつの事だったんだろう、
ちいさい頃に学校でやったような気もしますが、記憶が全くありません。やっぱり、その道のプロフェッショナルの人に教えてもらった最初の体験が、一番心と体に残っているものみたいで、19歳のときに、彫刻家の先生に教えてもらった木彫りの体験を忘れられません。

木がかたくて、刀が怖くて、彫り間違えるのがいやで、全然形にならず、ああ、粘土ならできるのに、こんな難しいとは思わなかった!と、上手く彫ろうとそればかり考えていました。

そもそも、上手く彫れる訳がありません。
上手い木彫がいい木彫ではありません。

思いがこもったもの、感動がつまったもの、感情が木からあふれているものが、いい彫刻です。
祈りがこもったもの、喜びや哀しみのつまった塊、彫刻はそういうものになりたがっています。
技術は敬意を生みますが、感動は共感を生み出し、見るものの心まで涙の海が体の中で波打ちます。
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ちいさな木彫り教室を、先日させて頂きました。生徒さんたちの作品。

木彫り、というはじめての体験で、子ども達も大人の方も、普段では想像できない困難と疲労と挫折にぶつかります。それが、出来上がったときに大きな感動への通り道です。
ちょうど、美術は、こんなものなんだ、と最近思っていました。

自分が小人になって、澄んだ水をくみに行ったバケツのように、深い深い井戸の底へ、落ちて、真っ暗で、つらく孤独にぶつかります。誰も助けてくれず、ひとりぼっちでやりとげるしかない、そんな過程の中で、自分自身がすこし見つかります。
井戸の底で、見えない中でがむしゃらにすくったバケツ一杯の水。
地上にあがると、澄んだ水の底に、この世のものとは思えない、自分の力で見つけたとは思わないような美しい砂金が混ざっています。そこに感動と涙があふれます。
新しい自分と、予期していなかった宝石と、何よりもおいしい水。
その水を飲み込んで、体の中が一段ときれいになって、また、井戸の底へ向かう。
美術は、それの繰り返しのような気がします。
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生徒さんたちの完成作品、その1。
いちどでも思いをこめて木を彫ったことがある人は、この感動体験のとりこになります。
最初の作品は、全ての人が、傑作を残してくれます。
そんなみんなの貴重な一日に、私が立ち会うことができて、私自身が感動をたくさんもらいました。
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完成作品、その2。
来てくれた皆さん、本当にありがとうございます。
どこかでまたみんなの木彫りに出会えるといいな、一緒に展示できるといいな、とおもっています。
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そんな最中に新作、アニマルペンダントトップが完成しました。
これは、「旅する彫刻」企画のひとつで、みんなに、彫刻をつけて歩いてもらいたい、という願いから生まれた小さな作品達です。
『Bara jamte  -いつも一緒に-』
期間 8月27日(金)~9月5日(日)
ミュシカさんで、展示会と限定販売を行いますので、ぜひ足を運んでくださいね。  
次回の木彫り教室は、ミュシカさんで、8月28日と、9月4日に行います。     
ご予約はミュシカさんまで052-737-8601

木彫りを、少しでもたくさんの人に体験して頂きたいと思っています。
by m_kirin30 | 2010-08-08 21:40 | 展示 | Trackback | Comments(4)