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こころでかんじる

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星の王子様もキツネも砂漠で未だ見つかっていませんが、
目の前の動物たちに、いま本当にたくさんのことを教えてもらっています。

キツネがいう、「かんじんなことは、目に見えない」
あの言葉の本当の意味を、今回の経験でようやく気づけたのかもしれません。

この一週間はガゼルたちの観察にほとんどを費やしました。
ガゼルは砂漠にも野生でたくさんいる、目の前のこのこも、目だけで見たら、ふつうのガゼルの赤ちゃんにしか見ることができません。
だけどこのスケッチしたこの子は、アマール。
すこし小さく生まれ、お母さんや家族に囲まれてすくすくここで育った、
世界でたったひとりのたいせつなこの子。
他のどんなにそっくりな姿形をしているガゼルも、この子の代わりは決してできない。

人に愛されて、守られて、大切に育ったアマール。
わたしがつくりたいのは、アマールそのものなんです。
見た目だけそっくりでも、いい彫刻にはならない。
目に見えないこの子の歴史やきおく、性格やこころ、感情やにおいや、手触りや温度。
まるごとリアルに彫り込んで、スクッと立ったときはじめて、
彫刻が生き物に変わる瞬間がくるのだと思います。

それはわたしの力量ではなく、ただ、自分は目の前の美しいこの子のぜんぶを、
すくってこぼさない器になるだけです。
わたしは目の前からもらった美のすべてを、そのまま木に伝えるだけ。
だからいまはとにかく五感ですべての感動を記憶しておく、それだけです。
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世界をもっとよくみないといけないなと思います。
みる、というのは、目を使ってみるだけじゃだめなんです。
手で触ったり、においを感じたり、音を聞いたり、かくされた物語を探したり、
みて、こころとからだが働いてないと、みたことになりません。

めのまえが美しく見えるのは、
自然の構造と、自分の目と、自分のこころが、
正しく働いているからだと思います。
どれかがひとつでも病んでいると、世界は美しさを失ってしまいます。
まいにち、自分に問いただします。
「今日は、せかいは、きれいにみえる?」
私の仕事の前のひとつの確認です。
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答えはいつもかんたんです。

空を見上げればいい。
木々にさわったり、動物たちに挨拶したり、
世界のどんなところにいても、小さな自然のきれいさは、
フルーツや野菜のひとつにだって、きっとあります。
世界をきれいに感じることができたなら、
きっとその日のこころもきれいにすきとおって、じゆうでやわらかくいられるでしょう。
美術を仕事にする人間にとって、いちばんたいせつな「かんじるこころ」
それを、持ち続けることができたらどれだけでも進めるんだと思います。
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貴重な体験の中で、そんなことをたくさん気づかせてもらって、
滞在させて頂いているここの奥様とご主人様に、感謝してもしきれないありがとうの思いでいっぱいです。生きていて、こんなに充実した毎日が送れるなんて。
滞在期間もあとすこしになってきましたが、最後の日までしっかりと観察を続けようと思います。
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by m_kirin30 | 2010-11-25 02:17 | すてきなところ | Trackback | Comments(10)

砂漠の真ん中で

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海外にはじめてきた私は、日本をいま外側から感じています。
ちょうど絵を描く時も、輪郭を外から決める時があるように。

アラブの砂漠の真ん中で、はるかかなたにオマーンの山々が見える、視界をさえぎるものはなく、みわたすかぎりの砂がただ、ひろがっているだけ。
はじめてきた外国が、こんなにすてきな人や動物たちとの出会いであふれているのは、本当に幸運なことだったと、心底思います。

いまをちゃんと生きるということ。
それは、わたしにとっては、いまをちゃんと描くということ。
いまを、ちゃんと刻むということ。
それがわたしにとって、いちばん自由でいちばんいい人生なんだと、
こころからそう思います。

無名のわたしだけど今の仕事が心底好きです。
人と出会い、人をつなぐ動物たちと出会い、動物たちとふれあい、一緒に作り上げて行く、美術。
言葉が通じない異国でも、学をもたない文字の書けない人々でも、
何も知らない小さな子供達でも、わかりあえるいきものたちの美しさとあいらしさ。
それをつくるためなら、どんなものでも捨てよう、ほしいものは、ただ、目の前にいる動物たちを作れる時間、それだけです。

きっと人って、「時」以上に価値のあるものなんてあるのかなあ、
いまじぶんの細胞にどんな記憶を残したいか。
それだけだとおもいます。
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砂漠の真ん中で、動物たちと心行くまで遊んで、絵をかいて、彫刻をして、一日が過ぎる。
わたしの10年前のぞんでいた仕事に対する夢が、かなった、その先は、果てしない鍛錬の道。
どこまでも進んで行けたらいいな、
だれもみたことのないリアルな彫刻を、
この手で作れたらいいな。
そう思います。
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写真がいつもよりどれも素敵なのは、
いまお世話になっているおうちの奥様が、ぜんぶ撮ってくれたものだからです。
たからものの写真がたくさん増えて、
あっというまに2週間が過ぎて行きました。
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by m_kirin30 | 2010-11-19 01:26 | 未分類 | Trackback | Comments(41)

ものづくり。

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UAEにきて一週間、あまりに貴重な毎日に、かみしめてもかみしめても、足りないくらい、の体験をさせて頂いています。
野生動物たち、飼っているラクダとの生活や知恵、
砂漠の足跡の正体や、毎日必ず昇る太陽。
日本という国から、出たことのなかった私には、あまりに新鮮で、日々、言葉を失っています。
野生動物のガゼルが、自分のあしもとまできた時の感動は、今まで体験したことないものでした。
こころとこころがふれあう。
人というカタガキを捨てて、ひとつのいきものとして、こころを静かにする。
毎日、動物たちを前に自然とそんな事を学んでいます。
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砂漠の真ん中で、朝日を眺められるしあわせ。
砂のなかの、あたたかい砂の部分に手を入れて、大地のあたたかさを感じたり、
夜明け前の虹色の空や、月明かりの砂漠。

「感動」ということが、
どれほどもの作りにとって大切な事なのだろう。
おそらくそのエネルギーがなければ、
何一つ作れない。
だけど砂漠の民でも、朝日に足をとめて見ない人もいるだろう。
日本でも同じ、美しい木々や空があっても、何も感じない人もいる。

どこへいたって、何をしてたって、
こころをやわらかくしておけば、感動はやってくる。
本物の感動は、お金のいらないものの中にある。
あたりまえにあるものにこそ感動できるからだづくりができたら、
それがものづくりのいちばん大切な事なのだと、
あらためて気がつきました。
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奥様が撮ってくれた写真、わたしのたからものです。

理想の暮らしをまのあたりにするなか、
わたしもいつか、動物たちに囲まれて、自然の中でくらせたらいいなと、
心から思っています。
自分の仕事にとっていちばんいい生活を、しなければだめだと思いました。
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まだ一週間ですが、とても早く感じます。
もっともっと一日を充実させて、めいっぱい学んでかえって、いい彫刻を作る力にしたいです。
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当面の目標はガゼルたちをとにかく観察することです。
by m_kirin30 | 2010-11-13 12:15 | すてきなところ | Trackback | Comments(4)

みつける

アラブ首長国連邦の、アブダビのアルアインという町にきています。
「うちにいる動物たちの彫刻をつくってほしい」と、一本のメールが来てから約半年。
「どのような動物ですか?」
「ガゼルと」
「ええ〜!ガゼル!」
見たこともない野生動物、いい彫刻が彫れるか、不安になっていたところ、とりあえず、一ヶ月ホームステイして、動物たちと仲良くなって実際に観察してもらったらどうか、というお返事をもらいました。海外に行くのもはじめてな私ですが、動物たちに呼ばれたなら、どこへでも行く!と思い、
今回の旅が始まっています。
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毎日、不思議なことや発見でいっぱいです。
鳩が頭に乗ってポーズをとったり、ラクダとほっぺたをすりあわせたり、
お祈りの時間があってお祈りが聞こえたり、
文化の違う中で、動物たちとのふれあい方も違う、
一秒一秒が貴重な体験をさせて頂いています。
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ラクダたちは、ラクダレースに出したり、
ラクダミルクをとったり、
ラクダ美人コンテストに出場させるおうちもあるそうです。」
スケッチをのんびり見ていたかと思うと、いきなりパクリ!
スケッチを危うく食べられるところでした。
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ここでは何もかもが新鮮で、毎日発見があり、
ガゼルたちは、ほとんど野生動物なので、私に寄って来たりは決してしません。
それが、すごく心地よかったです。
本来動物とは、探りあいながら、徐々に距離を縮めて行き、
ひたすら待って、いい瞬間をスケッチする。
おそらく彫刻にするのもとても難しく、たくさんのスケッチと観察が必要ですが、
難しい事にチャレンジできることが嬉しくて仕方ありません。
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だけど、
かんじんなのは、「みつけるこころ」なんだなとおもいます。
本当は日本にいて公園で変な虫を見つけたって、
一羽のツバメを観察したって、犬とふれあったって、
自分にあふれる好奇心と新鮮な発見力があれば、どこだって何をしてたって、感動できる。
そのことに、日々何となくいきていると、忘れてしまったりします。
遠くアラブに来て、砂漠に出会い、
私はそんな大事なことに気づきました。

そのためにも、時には旅は必要なんだなと、思いました。
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描きたい動物が多すぎて、見つけたいものが多すぎて、
一日がとてもはやく過ぎて行きます。
一ヶ月、貴重な時間を、かみしめながら過ごして行きたいと思っています。

今回、ホームステイさせて頂いているのは、はなももの別館というブログをされている、UAEのお宅です。
いい彫刻が作れたらいいな、
こころからそう思っています。
デッサン力を何倍にも磨いて帰ろうと思います!
by m_kirin30 | 2010-11-10 17:19 | すてきなところ | Trackback | Comments(11)

いのち

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シバちゃんの彫刻が完成したので、私の生まれ育った尼崎の中公園で撮影をしてきました。
中公園、ちいさい頃は、ここが宇宙のすべてのように広く不思議に満ちた場所でした。
クスノキに登って黒い実をつんだり、コブラを探したり(いません)
テッカテカの泥ボールをつくって投げて遊んだり、
ツツジの花の蜜を吸ったり、
何だかわからない紫の実を食べて、家に帰ったら図鑑で毒の実らしきものと判明し、なぜか母親に毒消しに牛乳を飲まされたり。
そんな野生育ちの私は、おままごとでもいつも犬か猫の役で、
終始この公園で、「ワン、ワン!」と吠え、「ニャー、ニャー!」と鳴いていました。

あれから25年。
四半世紀が過ぎて、公園で遊ぶひとは減り、中公園は何もない誰も来ない公園になりました。
3つ子の魂100までとはほんとうで、
今でも犬やクスノキや猫とまつわる仕事をして暮らしています。
ケモノのような性格だったので、
たくさんのひとに心配をかけ、たくさんのひとが涙を流して、私は育てられて来たのでしょう。

わたしは大学3年生の時に犬を飼い始め(黒柴 月君)子育て同様に涙を流しながら懸命に育ててきました。くる日もくる日も大学に一緒に通い、たくさんのきおくを共有しました。
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不思議な感覚になったのは、
いっしょにいると、「犬 対 人」という感覚がなくなってくるということです。
そのほかのあらゆる動物たちも虫も木々も同じです。
「人 対 動物」 「人 対 木」 でもなく、「いのち 対 いのち」であるということ。
「個 対 個」という感覚に近いです。

人であることを忘れて、ひとつのいのちが、ひとつのいのちと、真摯にむかいあっている。
そういう時間を作れたら、
目の前にいる犬は、犬ではなく、たったひとりの生きている友人。
目の前にある木は、木ではなく、たったひとりの相棒。
ことばは人が作ったものなので、種類や既成概念でものごとを判断することがなくなれば、
目の前にいるのは、無量大数のいのち。
そのなかで、このいのちと、このいのちが、
ひとつのいのちを分かち合っている。
そんな運命的な出会いを、今はいちばん大切にしたいと思っています。

自分が生きることで、誰かのとくべつな存在になって行く。
いきものを育てたり飼ったり、誰かと暮らしたり、ともだちになったり。
とくべつな自分のいのちをもっと宝物にしなきゃいけない。
自分のためにだけじゃなく、だれかのためにも。
そんな風に思っています。
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明日から一ヶ月、アラブのアブダビというところに、動物たちの絵を描きにいってきます。

いのちといのちの対話がちゃんとできたら、きっといいデッサンができる。
私が人であることをひけらかすと、動物たちはこころを開いてくれないでしょう。
まずは、目の前のいのちに、じぶんのいのちを認めてもらう。
そこから始められたらいいなと思います。
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パパがお守りにたくさんの絵を描いてくれました。
黒いトリは、相当な厄よけになりそうな予感です。
宇宙人みたいないぬも混ざっていますが、
砂漠のまんなかで、
星の王子様みたいに、
宇宙と動物たちと語り合って、ともだちをたくさん作って来れたらいいなと思っています。
by m_kirin30 | 2010-11-06 17:24 | 日常 | Trackback | Comments(2)