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ことば

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一冊の本が、人生を変える事があります。
私は19才のときに一冊の本に出会って、その後の生き方がおおきく変化しました。
美術の世界に来たはいいものの、何を自分の原点にしていけばいいか分からなかった私に、予備校の先生方がいい本だよ〜とおしえてくれたのが、この本です。

「ジャコメッティとともに」 矢内原伊作

最初に彫刻家ジャコメッティから矢内原にあてた手紙、
それは、この長い長いジャコメッティと矢内原のパリでの格闘の日々のあとに書かれたものでした。

「あの時私は生涯で初めて一本の線もひけなくなり、自分の画布を前にして何をすることもできずに座っていた。君のおかげで私はあの地点に到達したのであり、私はあそこへ到達する事が絶対に必要だったのだ
われわれは、われわれの仕事をつづけるだろう、われわれの肖像を互いに描きあうというわれわれの仕事を。
そしてわれわれは少し先へと進むだろう。終わりない道を少し先へと。」

この時点では、これらの言葉の重みが、リアリティがまだ分からない。
だけどこのあと、矢内原がパリでジャコメッティのモデルをしていたときの膨大なリアルな手記により、その真実が明かされていきます。
ジャコメッティはデッサンで、矢内原は手記で、その真実の記録を互いに残しあおうとした、そのうつくしくリアルな日々、これこそが、わたしの探していた、真にリアルな日々なのでした。

現在、この「ジャコメッティとともに」は手に入りにくく、そのすべてを読むのはおおきな図書館でしか困難ですが、後日発売されなおした「ジャコメッティ」には、真実の核心部分が削除されてしまっています。
わたしは、ジャコメッティと矢内原の真実は、「ジャコメッティとともに」のこの本でしか、理解できないと感じています。この本を行きつけの天牛書店(大阪)で見つけたときは心がふるえ、高額でしたがすぐ買いました。
どれほどのお金よりも、たいせつな、私のなかの一冊の本です。


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「巨岩と花びら」舟越保武

それから、彫刻の世界に興味を持った私は、先輩が読んでいたこの本を買い、心が彫刻のほうへ、またおおきく動き始めました。
「ジャコメッティとともに」を読んでこころがうごき、「巨岩と花びら」を読んで心が固まった、そんな感じでした。

彫刻家、舟越保武先生の日々のかなしくも美しいリアルな手記、そのどれもの暮らしが、純粋でまっすぐで、あたたかい、彫刻家って、なんてすてきな人たちなんだ、と感じました。
「自分が真剣に作ったものを、あなたが真剣に見てくれている、それが何よりすばらしいこと」
彫刻の原点のたくさんつまった、本当に美しい日本語の、一冊の手記です。
美術を目指すすべての人たちに読んでほしい一冊です。
この本を私は常に数冊買っておいて、後輩たちにプレゼントしては、また買いました。
私のせいでか、現在は在庫がほとんどなくなり、手に入りにくいようで、少し心苦しいです。(おそらくは全く関係ないでしょうが)

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「蝶が飛ぶ 葉っぱが飛ぶ」河井寛次郎

河井寛次郎さんの本はすべて読みました。
ものづくりのよろこび、仕事のよろこび、いのちが生まれるよろこび、
よろこびの言葉でうめつくされているこの本は、わたしの最も好きな、日本民芸運動がさかんだった頃の寛次郎さんの言葉たちです。
わたしはもう一度、日本民芸運動旋風をまきおこしたいという夢があります。
「有名は無名に勝てない」常に謙虚で真摯に、時に科学者のようにクールに、現実を語る、たぐいまれな一冊です。

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「バベットの晩餐会」

この本はとてもみじかく、すぐ読み終わるのですが、映画にもなっている原作です。
だけど短いストーリーの中でも重く鋭い一節一節が、芸術の核心を突いているような気がして、
暗記するまで読んだものです。

「次善のものに甘んじて満足せよと言われるのは、芸術家にとって、過酷な事、耐えられぬ事です。
真の芸術家はいつも、自分に最善を尽くさせてほしい、というこの世に向けた悲願の叫びがあるのです。世界中で芸術家たちの心の叫びが聞こえます。わたし最高の仕事をさせてくれ、と。」

「ひとがあの世に持って行けるものは、この世で人に与えたものだけなんだって」

わたしはこれらの言葉をいつも、脳の中に宿して暮らすようにしています。

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あとはいろいろ、漫画も好きで読みますし、絵本も読みますし、本棚には動物関連書籍の他にも貧困旅行記や博物学の本、宇宙物理学の本など様々ですが、全般的には、ノンフィクションのものが多いです。わたしはきっと、この世の事実が、好きなのです。

今回は、すこし、お盆という事で、横道にそれた、大好きな本の紹介をさせていただきました。
次回からいつもの制作日記に戻ろうと思います。


8月29日に、タリーズコーヒー新宿コクーンタワー店でイベントがあります、
絵本「神様のないた日」の読み聞かせ&ライブイベントです、

ぜひ遊びにきてくださいね!
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by m_kirin30 | 2012-08-13 10:40 | | Trackback | Comments(2)