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彫刻の仕事

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彫刻とは、多くの不自由の中で制作するものです。
大学を出るととたんに、世界は変わります。
今までは、自分が神聖な芸術を作っている気分で、朝から晩まで思う存分制作していたのに、
卒業していざ作家活動を始めると、
音がうるさい、ゴミが大量に出る、木材や彫刻を置いておく場所がない、粉塵がひどい、
たくさんの理由で、町中での仕事は困難を極めます。
その上、高い、場所をとる、重い、
なかなか手に取ってもらえず、生活は困窮していきます。

大学時代にためた貯金はすぐそこをつき、生活ができないと彫刻もできないので、たいていはアルバイトか、教師、講師の仕事でやりくりをしていくことでしょう。

私はその苦しい時、ふっと彫刻家、という仕事を遠方から見てみよう、と考えました。
彫刻で生活できないのは、彫刻家とは呼べないのではないだろうか、と。
こんな当たり前の事なのですが、美術の世界では実際美術だけで食べていけない美術家がたくさんいます。それでもいいものは作れるし、私は仕事にしてようが、してまいが、いい美術は、いいものだという事を断言できます。
私はどういう風になりたいのだろう、と。
そのとき、私は、彫刻で食べていく彫刻家、になりたいと、心から思ったのでした。

自分の得意分野、デッサンの技術の使える具象彫刻の仕事で、
自分の最愛の、動物たちの姿をのこしていく、動物の肖像制作。
この分野でとにかく世界でも類を見ないところまでいけないと、日本で作家活動をしていくのは困難でしょう。

一番の足かせ、彫刻は値段が高い、というもの。
高い、と感じてしまうのは、それだけの価値があるものを、サービスを、お客様側に提供できていないからなのではないか、と。
そして価格を少しでも下げる努力を、お客様が喜んでくださるサービスを、私たちがしてこなかったのではないか、と。

スピードを上げる事でも価格は抑えられますが、私は彫刻の仕事に必要でないすべてのものを捨てようと考えました。
便利で快適な生活、それをやめて田舎に住む事で、
多くの出費を抑える事に成功し、その分彫刻の精度をあげることが可能になります。
木材を大量にストックしておく場所もあり、光熱費も薪を燃料にして出費を減らす、
生活を変える事で、多くの出費をなくす事ができました。
そしてお待たせする事はしょうがないけれど、一つ一つの仕事をとてもていねいに、お客様が価値をプライスレスだと思ってくださるような、お金には換えられないようなたったひとつの肖像彫刻を、作って仕事をしていこうと、心に決めたのでした。
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この仕事は多くを稼ぐ事はできませんが、田舎での豊かな生活は可能です。
私はたくさんのものを捨てる事で、たくさんの豊かなものを手に入れたような、そんな心地でいます。
意志を持って、新しい山を登るために捨てた荷は、
きっとその何倍も価値のあるものになって、自分のもとへあたらしいものがやってくる。
そんな風に今は感じています。

苦しい事はたくさんあるけれど、自分の得意分野を仕事にできる事はやりがいもあり、なにより面白いです。
若い美術家たちが、たくさんこの春美大を卒業して社会へ巣立っていきました。
一人でも多くの、美術を仕事にする美術家が、日本に増えてくれる事を望んでやみません。
そのことがいずれは、日本の国土を、生活のあたたかさを、日常の幸せを、
そういったものを育てる種になるということを想像しています。
こころを動かす美術の仕事は、人間の衣食住と同じくらい、たいせつなことだと感じながら、
日々、美術の仕事を、続けていこうと思っています。
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次回展示会は東京です、たくさんの、いぬ、ねこ、犬猫彫刻グッツに会える予定です。
詳細はまた追ってアップしますね!

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by m_kirin30 | 2014-03-26 10:53 | 日常 | Trackback | Comments(8)