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一生

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28のときにたいせつな友人をこの世界から失って、それからは止まり木を失った鳥のように飛び続けてきました。
残されたものにできることは、ほとんど何もなくて、
ただ、ひたすらに生きることしか、できませんでした。
そのころからいつも、私は自分の一生を、外側から見ているような感覚で暮らしています。

ひとつの生は、生まれた時に、もう死への時を刻んでいて、
それは彫刻の始まりのように、いつかは形をこの世界に残して、そして失われていくのでしょう。
私より、彫刻の方が長く、この世界に暮らしていくでしょう、
自分がいなくなった時、どうかこの世界を汚さないようにと、
のこしてきた人たちに、この世界の美しさのかけらでも、伝えられたらと、
現実のそのままのかたちを、自然素材の木というもので、作る具象彫刻家になりました。

私は自分の彫刻には表現など何もなくて、つたえたいことは、ひとつだけ、
現実のそのままが、この世界で一番美しいということ、
それは、この世界から去った者たちの目で、もしかしたら現実を見ているのかもしれません。
犬を撫でている時間、猫に膝にのられた時間、家族と過ごすほんのひととき、友人と話す何気ない会話、
大好きな音楽を聴いている夜、忙しく働いて動いている社会、
そのどれもが美しすぎて、
そのどれもを残したくて、でも残せないものばかりで、
せめて目の前に一生懸命生きている犬を残せたらと、
自分のできることの目の前のせいいっぱいを、日々続けています。

その子の生きた一生を、形にする彫刻の仕事では、
嘘なんかもちろんつけません。
鼻の先から、尻尾の先まで、その子の形は、その子の真実なので、
できる限りにそのままに、そしてただの型取りでなく、命のそこにあるかたちを、
最高のその子を、残してあげたいと感じます。
彫刻をこの世界で出会わせてくれた、私が生まれてきて与えられた使命だと思っています。

一生ほど短い時間、ひとつのことを続けるのは、実はとても簡単なことかもしれません。
この仕事を100年でも1000年でも、死んでも続けたい、
いつか自分が一生を終えたときに、ひとあしさきに終えた友人たちに、また彫刻をつくって、現実の美しさをとどけられるように、
しっかりと、この世界を見ていけたらなと思います。
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サーメルもダマーニも、
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ヴェルちゃんリンゴちゃんも、
私にとっては、たいせつな友達です、
見ているだけで、涙が出るほど、彫刻を見るたび、いつもその子を思い出します。
それは、悲しいとは少しちがう、思い出すような不思議な感覚で、
ありがとう、という思いに、近いのかもしれません。

最愛の生き物たちへ、一生を終えたものたちへ、最高の感謝をこめて。
私からの思いを彫刻に込め、これからも作りつづけていきたいです。
by m_kirin30 | 2015-04-10 22:42 | 日常 | Trackback | Comments(8)

はたらく

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彫刻で仕事を続けてきて、もうずいぶんと経ちました。
彫刻以外の仕事では、私は生活したことがありません。
それなので、会社勤めの苦労や、彫刻がしたいのに制作の時間がない、というような苦悩は、感じたことがありませんが、それとひきかえに、彫刻をとったら何も残らないぬけがらの自分になりました。

美術で仕事をしていくことに、始める前の私はずいぶんと誤解を持っていました。
過去の話を聞き、売れない画家でもいい絵を描くんだとゴッホを賞賛したり、ただ没頭すればいいんだと若冲を賞賛したり、
もちろん美術には、限りない方法があるので、それぞれの個人の方法で、いいものを残していくには、変わりないのですが、
自分の好きなものを好きなだけ作って、売れないなら売れないでいい、というのは、ほんとうにおおきな間違いでした。

それは、仕事を始めてみて、続けてみて、わかった大切なことでした。

自分のいいと思ったもので、ひともいいと思ってもらえるものをつくること、それが仕事です。
美術の仕事も、他の多くの仕事とおんなじで、自分の作ったものが、誰かの財産になるかどうかが、一番大切なことです。
わたしはこんな簡単なことを、はすかしながら美術の仕事を立ち上げてずいぶんとたってから、実感をもって知りました。
自分の作ったものが、多くの人の財産になればなるほど、それが偉大な仕事ということになります。

美術の作家業のことを、まだまだ学ばなければならないと感じます。
それは、日本の現代社会で、この業種の方が本当に少なく、彫刻家ともなると超絶滅危惧種に近い存在だからです。
いつか、このむずかしい彫刻家という職業を、目指す若い後輩たちが現れた時に、明るく正しい道標が示せるように、私たちが確かな実績を示さなければならないと感じます。

美術家が、ものをつくるとき、

それが自分にとっての財産になるのだろうか、
それが誰かにとっての財産になるだろうか、
それが社会にとって、国にとって、世界にとって、地球にとって、未来にとっての財産になるだろうか、
いつでも視野を広く大きく、この大切なことをいつも心におき、正しい判断で仕事を選び、制作できればいいなと感じます。
視野が狭いと、たとえ自分の身の回りは潤っても、目に見えぬ誰かや何かを犠牲にしてしまう場合が多いからです。

たったひとりの身近なひとから、やがては多くの見知らぬ人たちへ、
この大好きな世界にとって未来にとってのの財産になるように、そのようなものをつくるために私は、この仕事を続けていこうと考えています。
一枚の紙から、デッサンで多くのひとの心を輝かせるダビンチのように、
一つの石から、彫刻で多くのひとの心を震わせるミケランジェロのように、
なれたらいいな、とおもっています。

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3月末から東京主要駅に、ナチュラキュアという新型自動販売機が並び、動物たちの絵をかかせていただいたり、彫刻の展示会をしたりしました、
忙しくはたらくひとたちに、すこしでも駅の中でほっこりする時間が作れるように、動物たちの絵が入った自動販売機が並びます、みつけたらぜひ、動物を数えてみてくださいね、


近くの展示予定は、

4月4~5 アニマルクリエイターズカーニバル

5月16日〜6月20日 東京 ギャラリーキッサ 旅する彫刻 はしもとみお個展

7月4〜12日 香川県 古木里庫 個展予定

7月25日〜8月31日 大阪 彫刻の大動物園展示予定


お近くの際は、彫刻は触れますので、ぜひ動物たちにふれあいにいらしていただければと思います。
by m_kirin30 | 2015-04-02 13:15 | 日常 | Trackback | Comments(5)