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仕事

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彫刻のレストランは、日々始まっていて、私もシェフあさちゃんも忙しく毎日を過ごしています。
いろんなお客さんが毎日来てくれて、毎日新しい出会いに囲まれて過ぎていきます。

彫刻家、という職業を聞くと、知らない人はどういう仕事だと感じるでしょうか。
好きな事をやっている仕事
食べていけそうにない仕事
大変そうな仕事
おもしろそうな仕事

毎年たくさんの子達が美術を志し、そのごく一部が彫刻家になりたいと希望します。
彫刻を選ぶ子は、かなり珍しいほうです。

彫刻だけでは食べていけない。

こんな事を美術大学に入る前の高校生が語っていたりします。
もちろん親からも先輩からも言われますし、あげくの果てには彫刻の先生からも言われます。

その度に、いつも思います。
そんなことは、なかったと。

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彫刻家なんて、なれない。そう思ったら、その時点であきらめる、です。
夢をあきらめるのも、夢を叶えるのも、同じだけ勇気がいる事です。
好きな事であれば、なおさらです。
あきらめる事が肝心な事もあるし、私もたくさんの事をあきらめてきました。
あきらめるのも、夢を叶えるのも、同じだけパワーがいるなら、
だったら、これだけは全てをかけて夢を叶えてしまおう!
そう思えたのは、お兄ちゃんのある言葉でした。

お兄ちゃんは東京でジャズドラマーをしていますが、お兄ちゃんも大学卒業後はコンビニでアルバイトをしながらジャズを続けていました。
数年後、アルバイトをぴったりとやめ、ジャズ一本で生活するようになりました。

私はその頃、大学卒業後、就職か、アルバイトをして制作を続けるかで悩んでいました。お兄ちゃんは言いました。

「一本にしたら、意外と何とかなるで。」

自分と同じ血をひく人からのアドバイスは、私には一番頼りになる言葉でした。

それから私も、ギリギリでしたが普通のアルバイトはやめ、美術に関係する仕事のアルバイトもやめ、制作一本で生活する事を決めました。

しばらくは、何ヶ月かにひとつの仕事を力一杯やったり、デッサン力を鍛えたりする毎日でしたが、1年後、2年後、いつのまにかようやく彫刻の仕事が入るようになりました。

手が血だらけになりながらひたすらワンちゃんを彫った日々も、筋肉痛が治る間もなく次の筋肉痛が現れる日々も、楽しくて充実した毎日でした。

全ては、夢だった彫刻家の仕事だからです。
どんな小さな仕事でも、喜んでやりました。
お兄ちゃんも、こんな日々だったのかな、と思いました。
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今も仕事は毎日楽しくやっています。
おかげで右腕は、右の手だけでっかいカニみたいに右だけ太くなってしまいました。
あのカニを海で見るたび、自分のようでなりません。

ひとつ、思ったのは、
彫刻家という仕事は、特別な仕事ではないという事です。
どんな仕事も同じだけ価値があるし、どんな仕事からも学ぶところはたくさんあります。
自分に与えられた仕事を日々きっちりがんばっていきたいなと夏を前に思いました。
by m_kirin30 | 2009-05-13 23:15
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