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ひとにやさしく

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アトリエにリンゴちゃんとドンちゃん。
展示の前はアトリエがどんどんにぎやかになってきます。
わずか7畳半の一室のアトリエは、今動物たちで埋め尽くされ私の居場所もないほどです。

ここにいるのは、いわゆる見た目のかわいい子ばかりではありません。
私に噛み付いたネズミ、一目散に逃げたモグラ、おかしなトカゲや変な顔したカメレオン。
年寄り猿のビージーや、踏みそうになったカエル、ふつうのノラ猫、7色のウミウシ、などなど。
写真にはなかなか納まらない子達も混ざっていて、展示とかに出しても、「いや〜ん」という方もいるくらいの生き物たちも彫刻になっています。

もちろん私も本能で、気持ちわるい、とか怖い、とかありますが、それらも尊い、といつ頃からか思うようになりました。

進化してがんばって気持ちわるいと思われる姿を身にまとって懸命に生きている動物たち。
嫌われ者に自らなって、自分や仲間を守ってきた種族。
そんな生きる事にあこがれを持つものたちは、何も悪くない。
そんな風に思えたのは、高校3年生の時の、卒業式のクラスメイトのスピーチでした。

3年A組赤井君。
私たちA組は理数系、3年間同じクラスで、誰がリーダーともなくみんながゆるく仲良しでした。
出席番号が一番だったという理由で卒業生代表になってしまったふつうの赤井君、彼はそのプレッシャーからとんでもなく素直な言葉をつむぎだして、私たち全員を送り出してくれました。

今でも心に刻み込んである言葉です。

「ぼくは、人にやさしく、自分にきびしく、という言葉が嫌いです。
 ひとにやさしく、自分にもやさしくしたいです。
 自分をもっと大切にしてあげたいです。
 こんなぼくだってなにかと必死に生きています。
 そういったぼくのようなふつうのひとが社会にはほとんどいて、そのほとんどのふつうの人たちが支え合いつくっているのがこの世界です。
 えらいひとはすごいですが、えらいひとを支えているのはぼくたちふつうのひとたちです。
 ぼくはえらいひとにはなれませんが、そのようなふつうのあたたかいひとにはなりたいとおもいます。」

偉くなれ、賢くなれ、いい大学へ行け、ひとにやさしく、自分にきびしく。そういう校長先生や教師たちの前でこの言葉を強く言えた彼はこの日英雄になってA組は全員大泣きをしました。
ふつうだった彼が、体の奥からしぼりだした本音の言葉たちは、尊く、あたたかく、どんな名言よりも私たちの等身大の胸に響きました。

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いまでも変な形をした虫や、おかしな気味の悪い生き物、怖い顔の動物を見るたび、この言葉を思い出します。
「こんなぼくだって、何かと必死に生きている。」
そう、言われているようで、彫刻せずにはいられなくなります。

いい顔のものや、きれいなものが美しいんじゃない。
ひとにぎりの美を支えているのはほとんどの醜なのです。
光あるものが立つ限り、影は必ず存在する。
地上100メートルの巨樹を支えているのは、名もないたった3センチの菌類だったりします。
その、支える役だって、すばらしい役目じゃないかって思います。
そんな、人知れぬアンサングヒーロー。
姿より心の美しいもの達。
まだまだ彫りきれないものがこの世界にはたくさんあります。
伝えたい感動がごろごろ転がっている世界です。
だからまだまだ死ねません。
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ふっと、昔の事を思い出した今日でした。

名古屋では8月あたま、東京では9月末、立て続けに皆さんの前に彫刻を展示する機会がいただけました。
もし、変な生き物が混ざっていても、どうか温かい目で、見てあげてくださいね。
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名古屋のミュシカさんに、おかしな彫刻を少しコラボして置いて頂いています。
ミュシカさんとは今後もワークショップなどでたくさんコラボして行くことになると思いますので、またご報告しますね。

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by m_kirin30 | 2010-07-04 08:39 | 日常
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