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やあ、またね

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一ヶ月のアラブでの滞在も終わり、昨日日本へ着きました。
心底毎日が楽しかったので、帰るのがさみしくて仕方ありませんでした。
動物たちを間近で観察できる日々、ふれあう暮らし、はなももさん一家との暮らし。
アラブの国について全く知らなかった私ですが、砂漠のうつくしさ、昔ながらの知恵や、動物たちとの暮らし、人々のあたたかさ、ひとつひとつに触れるたび、アラブという国が大好きになって、
日本しか知らなかった私は、ほんとに一度日本を出てみてよかったと、いま思っています。
日本のことも、もっと好きになれたし。
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この仕事のことも、いままで以上にすきになれた気がします。
彫刻制作は、まさに葛藤。
見たことのないリアリティを探すというのは、あてのない、はてしない、答えのでないかもしれない数式の証明のようなものです。
だれにも相談できず、たったひとりで決断して行かなければすすみません。

だけどいまは、違います。
私の中に、たくさんの動物たちが住んでいる。
出会った動物たちが、みんな居座っている。
リアルに手触りやにおいのひとつひとつまで、思い出すことができる。
こういう記憶力が、さいきんは備わってきて、
私の体の中に大牧場があって、みんなのんびりその中で住んでいる。
「おーい!さんちゃーん」
呼べばさんちゃんが出てきます。(手前の白黒のネコ)
そんな感覚を感じています。

リアルな体験は、リアルな記憶をつくる。
体の中の大牧場を、四次元ポケットのようにひろげて、
たくさんの木々を育て、みんな元気に生きてくれるように、こころと感覚をゆたかに茂らせておきたい、そう思います。
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11匹の猫、旅に出るのが日本ではふつうですが、
私が居る一ヶ月は11匹の猫は旅に出ませんでした。
「たいへんだけど、いてほしい」という奥様のやさしいこころに、胸がいっぱいになりました。
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奥様の撮ってくれた写真には、ただの写真でなく、リアルな感情と愛情がこもっていて、どんな写真集より、私には宝物の写真になりました。
日本で、ガゼルたちの彫刻、アラブの動物たちと、奥様の写真、アラブでの暮らしの記録などの、展示会が開けたらと考えています。
自分たちだけで楽しむのはもったいない、たくさんの人に伝えたい、そうおもいます。

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「やあ!」ってしてるみたいな木。
私はこの木が大好きでした。
砂漠をちょっと歩くとあって、いつも「やあ、」って挨拶してくれていた。
昼間の散歩では、木陰をつくって、太陽から守ってくれた。
夜の散歩では、「こっちだよ、」と道案内をしてくれた。
いつもいつも、この木の横を通るのが楽しみでした。
なのに、帰る日。
お別れをいいにいこうと、動物たちみんなにお別れを言ったあと、この木に向かって歩いていくと、何やら様子が違います。
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「またね」
と言っていました。
そらの色も木も空気も砂のあったかさも全部
さびしくて、しずかな別れの色に染まり、いつもの枝の手が、風でおもいっきり強くふられて、
「バイバーイ!」
って、手を振っていました!
私は、涙が込み上げ、気がついたら私も、この木に向かって、大きく手を振っていました。
「またね、またね!」
近くにいけずに、とおくから、ちぎれるくらいに手を振ってくれた木。

砂漠の真ん中にひとりの友だちが住んでいる。
私にはそんな感覚を感じて仕方ありません。

けしきも、木々も、そらも、
いつも何かを話している。
こころで見ているんだ。
目じゃなくて、この景色がうつくしいのは、こころでかんじているから。
自分の気持ちが、見えている。世界は、おおきな自分自身の中身なのかも知れません。
いつもいつも、世界がきれいに見えるためには、こころがきれいじゃないと、いけない。
風景の声を聞けるように耳を澄まして、感覚を研ぎすませて、
動物のように、生きて行きたいなと思いました。

今週末は大阪でボダイジュフェスタというイベントに参加します。
そのあとは、彫刻の毎日。2011年は、彫刻を作って駆け抜け、
2012年にまた、砂漠に来ようと思っています。
by m_kirin30 | 2010-12-08 15:02 | すてきなところ
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