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デッサンのススメ

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答えのない、何がいいかは誰にもわからない美術の世界で、デッサンにとりつかれながら暮らしてきました。

デッサンのいちばんの秘密は、うまく描こうとしない事にある。
これは、12年デッサンを続けてきて私が思うひとつの答えですが、こう描いてやろう、と意気込んでも、自分を押し付けるだけで空回りする事が多かったからです。

自分の感覚と目を、完全に脱力させて、何でも染みこむフワフワの状態にさせると、目が綿のようになって、無限の色や形がどっとおしよせてきます。

だから私はデッサンをする前は、必ず深呼吸、光を感じて、
ワクワクしながらも白い紙の奥にすでに見えてくるモチーフを、手ざわりを、感じるようにしています。

次に私は、いつの頃からか一本の手ではたりなくなって、両手で絵を描くようになりました。
最後はもちろん利き手が頑張ってくれますが、右も左も、最初は猫の手も借りたいくらい忙しいからです。
見えてくる現実のスピードに、ついて行くのに必死です。

紙の奥に空間の手ごたえを感じながら、いっぴつ、いっぴつ、
ここで終わりと言われても悔いのないように仕事を進めていきます。


デッサンには自分が嫌でもあらわれます。
自分のダメなところが、進むのをさまたげる大きな壁となって、よりよくするには頭の根っこから、くつがえしてあたらしい目と感覚で世界をみるしかありません。

そのときはじめて、自分を知り、自分の武器も盾も、盾で守ろうとしていたものも見えてきます。

武器を捨てるのではなく、武器を極めよ、が、デッサンの秘訣。
自分のもっていた武器で世界一を目指してから、極めたらはじめて武器を捨てられる日がくるからです。
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デッサンをしすぎると、デッサンにとらわれて自由な線がひけない、昔のような絵に戻れない。
こんな言葉を聞いた事がありましたが、
私はちがうとおもいます。
昔の絵に戻る必要は全くないし、過去の焼き増し作品を作っても仕方ありません。

真のデッサン力は、自由な絵へと自分を導いてくれる。

デッサンを続けて続けて、続けたそのさきに自由が待っていて、デッサン力は決して自分を縛りつけたりしません。
感覚を縛りつけているのは、自分のデッサンに対する引け目と、力のなさ。

デッサンが目指しているところは、そんな器のせまい世界ではなく、ようやく世界に向かって開かれたドアのように、ひろがっていく自由の空間です。
それが、私には一枚の白い紙。

白い紙を目の前にした自分は、あたらしい世界のドアの前に立っている自分。
自分で、描いていくリアルな世界。
夢物語でもなく、重いシリアスでもない、
何となく楽しく苦い、この現実の世界です。

長くなってしまいましたが、
私はデッサンをまだまだ続けていきたい、
100年弱の寿命が与えられるとしても決して足りない無数の世界のドアを、開いていきたい。

そんな風に、暑い夏の夜思った、今のデッサンに対する思いのまとめでした。




アラブ滞在のスケッチをまとめた動画をひとつ。今このこたちの彫刻をつくっています!






現在、動物愛護法改正案があって、パブリックコメントという、国民ひとりひとりからの意見を募集しているようです。
私もコメントしてみました。
ペットを飼っている方はぜひ!
by m_kirin30 | 2011-08-22 21:32 | 日常
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