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上手く描こうとするな

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上手く描きたい、正しく描きたい、そう思うのは当たり前で、絵をはじめてしばらくは、がむしゃらに自分の思う、「上手さ」探しでもあります。

上手さ、正しさを求めれば求めるほど、最後の最後に技術の鍛錬では超えられない、不思議なかべが、たちはだかります、この壁は、なんであるのか、
それは、いままで見たことのなかった、自分なのかもしれません。
自分というジャッジはおそろしいものです、
どこまでも甘くもあれば、どこまでもだまし、だまされる、
自分が本当に描きたかった世界と、今の自分の絵とのギャップがうめられず、
そのかべのまえで、足踏みして一生を終えられれば、どれほど楽かと思ったりもします。

そのかべをのぼるには、捨てなければいけない知識や技術のたくさんの荷物、たくさんの頭につまった重い既成概念、
今までしてきたことを疑うほどに、その挑戦は過酷で残酷ですが、
挑戦すること、そのものにだけある、あたらしいうつくしさ、おもしろさ、みたことのない美が、
かくしきれないようにこぼれ出てくる、そんなものが、ようやく、個性なのかもしれません。

その、手に入れたあらゆる技術を、選んで捨ててゆく、
その中に、その人らしさが、現れるのかもしれません。
持っているものより、捨てていくものに個性があらわれるような。

私は絵があるていど描ける、作れるようになったとあさはかに思っていて、そんな自分に、自分が出したジャッジメントは、
「上手く描こうとするな」
という、今まで自分に課してきた訓練と相対するものでした。

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私は最後の最後で一番欲しかった技術は、「完全に自由に描く」とうものでした。
マニュアルや技法、経験値、つまりは時間にとらわれず、モチーフと純粋にその瞬間めぐりあっていく、そんなかたちとかたちの出会いの物語、
それこそが、自分のつくっていきたい、美術だったのでした。

上手く描こうとすればするほど、私は理想から遠ざかる、そんな心地がして、
本当のデッサン力とは、いつでも自分の感覚から飛び、そして戻ってこられる、
自由をコントロールする能力なのだと、勝手に思っています。

後に、どの時代も、美術と真剣に相対した、そう思えるように、
真剣に大声で鳴く、庭の虫をみて、のこりの今年をせいいっぱい、ちかいました。

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by m_kirin30 | 2012-10-12 09:37
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