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木になる

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彫刻をしていると、単純なことですが、勇気というものがほんとうに大切なものだと感じます。
脳は、どんなに抗おうと思っていても、うまくいく方へ、楽な方へ、まとめる方へ、無難な方へ、失敗しない方へ、自分を誘います。
だけど感覚が、それにちゃんと反抗する、手がそれを争い攻めの一刀をきっちりと入れてくれる、それは勇気ある行動であり、自分の目を信じている真のデッサン力の表れでもあります。

自分の目を信じられることができたら、みんなと同じものを描いても、ほんとうに魅力的なものが描けます。
その人にしか発見できない美を描けるからです。
人と違ったこと、変わったことをして注目を得るのはある意味簡単ですが、人と同じことをしてあたらしい価値観を感じさせることのできる表現力は、とても難しく、素晴らしい発見でもあります。
普通のものをつくっているのに、飽きがこない、時代に流されない、そんな、「そこにしかない美」を作ることが、私の目標です。
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美術家は、いずれその扱っている素材のようになっていくような気がします。
木彫家は、性格そのものが扱っている木そのものになっていくのです。
木を毎日彫っているうちに、木そのものの性質に近づいていくような感覚に陥ります。
腰を据えて風に振れず、大きな幹を構え、じっと動かずじわじわと大きくなっていく、動物たちや虫たちに囲まれ、実り、枯れ、また育つ、そんな繰り返しが、今の私の日々ととても重なります。
画家は絵のように美しく静かな存在になり、
石を彫っている人はきっと石のように強くてたくましく、
土を触る人は大地のようにあたたかく大きく、
金属を加工する人は素粒子のように繊細でかつ大胆な動きをし、
木を彫る人はやがて木になる。
そんなことを、犬と散歩をしながら風景を見ていると感じる毎日です。

私は楠という木に支えられ、たくさんの勇気をもらい、自分の目でじっくりと観察した動物たちを届ける仕事をしています。
かつての彫刻家がまだ発見できていない美を、新発見するべく日々観察に明け暮れています。
三重県の片田舎に住んで3年が経ち、日々お庭のめまぐるしく育つ木々や虫たちの声に励まされて制作しています。
自分ほど、この世界が好きな人はそういないだろうと思うときがあるほど、この世界が本当に大好きです。そのことを言うのは、なぜか少し恥ずかしいのですが、もしかしたら木も動物たちも虫たちも、このことを思っているような気がしてなりません。
言葉でなく彫刻で、この大好きな世界の最愛のいきものたちを伝えていけたらと思っています。


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グループ展のお知らせです、

木彫りのどうぶつブローチを23個、展示販売します。

9月18日(日)~28日(水)ブローチ!ブローチ!ブローチ!3  weekend books



9月15日(木)~10月3日(月)「ペットショップにいくまえに」展 ウレシカ

ちいさな動物の彫刻たちを、展示販売と、等身大彫刻を少し展示します。


ちいさな個展のおしらせ、
10月9日
阿下喜秋の市 桐林舘 三重県いなべ市
大きなどうぶつの彫刻たちを、素敵な古い学校の中で展示します。

11月にまた東京でグループ展もあります、詳細決定次第おしらせいたします、
来年は美術館展示がいくつが控えており、いろんな地域で展覧会が開けると思います、
どこかの展覧会にぜひ、木彫りの動物たちに会いに来ていただければと思います。


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製作中のチグリス君(相島に住む野良猫)















by m_kirin30 | 2016-08-27 19:10 | 日常
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