「美術は,どこいっても、デッサン力にかかってくるんだよね」
と、誰も彼もが言います。
私は単純なのでそれを信じて,何もないところからデッサンだけをひたすら頑張りました。
それが見えている物があまりにも描けなくて、巨匠の模写をしてみたり,先輩のデッサンを隣に置いて描いてみたり,あらゆる手を使って,何百枚も描きましたが,全然,描けません。
二浪目に石膏デッサンや静物デッサンがあまりにもうまく行かなくて,ひどく落ち込んだときがあります。
その頃は,「絵が好き」という、当たり前の気持ちすら無くしてしまっていて,ましてや、「楽しんで描く」なんて,いくら言われても分かりませんでした。
日曜日は,気晴らしによく動物園に行きました。
絵を描かなきゃ,という気持ちから,何となく絵を描いていましたが,しばらくすると嫌になって,ずっと,大好きな動物たちをながめていました。

そんな時,ふっと動物の水彩が描きたくなって、B3パネルを持って,透明水彩のセットを持って,動物園に行きました。
なんと、デッサン用具を持ってくるのを忘れてしまい,下書きも出来ない事に気がつきました。
せっかく来たのに帰るのもバカだし,仕方なしにとっても緊張しながら,そろ〜り、そろ〜りと描いた絵が,上の、ヤギさんの絵です。
今までの絵とは違うし,どうかな〜?と思って,次の日先生に見せに行くと
「ハシモトも,ようやく、自分の絵が見えて来たな」
と,先生が言いました。
その言葉が,とっても嬉しかったのを覚えています。
自分の絵を描くには,自分の目で見えた物を丁寧に描けば、それでいいんだ、と、その時少しだけデッサン力の秘密を知りました。

絵を心底楽しんで描いたときに湧き出る,力の塊がデッサン力なのかもしれません。
いつも楽しい事ばかりではないので,いつもいい絵が描ける訳ではありませんが,私は,今でも白い紙を目の前にすると,ワクワクします。
これからどんな絵が生まれてくるんだろうと思って。
p.s
うちのパパさんを見習って,絵を楽しく描く事をこれからもがんばります(^^)

カフェグリットにて

社長の似顔絵