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地からの視点 

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人はいつも上から物事を見おろすのは得意です。高いところの視点から物事の全体像を見て、安全な位置で批判したり考察したりするのはとても得意です。
上から目線、という言葉にもあるように、いつも物事を上からの視点で見ていると、正しい判断を見失うこともあります。
広い視野で、自分の目線で物事を見て暮らしたいと感じ、三重県の古き良き風景の残る田舎にアトリエを移し、暮らしと彫刻を見つめ直してから3年半が経ち、見えてきたのはここに暮らす人達の地に親しい視点。ここでは同世代の友人が薪を集め割り、おかずを寄せ合って近所の仲間で食卓を囲み、友人が猟をし採った肉や育てた野菜を食べて暮らし、女性は集まって季節の知恵を分け合います。みんな地に近い、とても低い下からの目線で、自分たちの暮らしや社会を見上げて暮らしているのを強く感じます。人を見下す高さもないほどに、虫のような目線で。
一体の彫刻を作っていても、下から見上げる目線はとても重要です。重力の終着する場所、重力に逆らう底面、それらを丁寧に作り込むことが、彫刻に真の存在感とリアリティを与えるのです。それは、ものごとの終わりの形でもある、とても大切な要素です。人は地で生まれ高い場所へ登り、地に横たわり死んでいく生き物で、いつでも終わりの着地点の視点から今の生を見つめることは、人生を充実させる手助けになることでしょう。
私は彫刻家という仕事柄、いつでも最高の形で終わる所を見つけていきたいと感じます。一つの彫刻であっても、自分の一生であっても。いつも空を見上げながら地を歩く小さな生き物のような視点で。






神戸新聞 随想のコーナーに書いているエッセイです、これを書くためになかなかブログが更新できずにいました、こちらのほうにも、たくさんの方に読んでいただけるようアップしておきます。


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展覧会のおしらせ

会期:2017年3月24日(金)~4月2日(日)
10:30-18:30
27日(月)お休み
最終日17:30まで
東京 巣巣

くすのき(楠)から動物の命を彫り出す彫刻家はしもとみおさんの作品展を今年も開催いたします。
一部ちいさな作品の販売もございます。
(販売の作品はすべて会期終了後の抽選となります。会期中の店頭での受付のみ、お一人3点までお申し込みとなります。4/2の17:00受付締め切り)






 3/18~4/16


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木のどうぶつたち 愛知県  おかざき世界こども美術博物館 4月22日〜6月25日
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# by m_kirin30 | 2017-03-23 14:09

一番好きな場所

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1日、1日を、最善のかたちで繰り返し乗り越えていくということを、日々の目標にしています。
人生のおおきな軸さえ決めたら、あとはどのように葉をのばしても自由だ、というような感覚で、あまり遠くの未来を憂うことのないようにしています。
朝起きたらその日の暮らしを自分にとって一番良かったと思えるように過ごし、眠る、それの日々の繰り返しの連続が、やがておおきな一生のそのひとのかたちを決めていくのでしょう。日々の葉のシルエットが、やがてはその巨木の姿を形取るように。

「この世は、じぶんを探しに来たところ」と言ったのは河井寛次郎さん
「この世は、じぶんを完成させに来たところ」と言ったのはサン=テグジュペリ氏。
私は、というと
「この世は、じぶんを作りに来たところ」という感覚です。

自分のやわらかなおおまかな輪郭を、内からも外からも形作り、自分の人生を良くも悪くもとっても好きだったと思えるように、日々形作っています。

世界で一番好きな場所は、と聞かれたら、迷わず「私のアトリエ」と答えるでしょう。
アトリエは、自分の目で物を見つめるところ
自分の心で感じるところ
自分の言葉で、話せるところ
自分のものを作れるところ。
私にとってこれほどの場所が、世界中どこにあるというのでしょうか。

世界で一番好きなことは、と聞かれたら、迷わず肖像彫刻と答えます。
それは最愛の動物たちと触れ合える時間であり、私の一生をかけた大切な仕事でもあり、人生の形そのものが彫刻だからです。

よく、好きなことを仕事にするのは嫌だ、好きなことをお金に変えるのは何か違う、という言葉を聞きますが、
仕事にしたくらいで好きが好きでなくなるはずがありませんし、
仕事というのは突き詰めていくと本当にやりがいのあるものです。
制約や制限のその先に、自由があって、好きな事を自由に表現して仕事ができる日がやってきます。
プロであっても、趣味で絵を描く人と同様に、絵の事が本当に好きで、なにもビジネスとしてだけ絵と関わっているはずがありません。
絵が好きで好きで、どうしようもなくて、それしかなくて、そこだけが社会や人とつながれる場所で、それを仕事にしている。そんなひとが、生涯画家であるはずです。

私は彫刻の事が世界で一番好きで、その好きは本当に負けない自信があります。
この大好きなアトリエで、最高の仕事を残していく事に、自分の時間を丁寧に費やしていきたいです。その中に、とても平穏な日々の暮らしがあれば、それで十分です。
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一年で、本当に少しの数しか、彫刻というものは作る事ができません。
ひとの一生は彫刻を知るにはあまりに短く、1000年生きても飽きる事はないでしょう。それだけ地球上には、まだまだ美しいいきものがひしめいています。
来年もまだ見ぬ子たちをせいいっぱい作りたいな、と思っています。毎年こう思っても、年末に、残せた彫刻たちの数を見て、手が8本あったら、、、と思うばかりです。

愛犬の月くんが14歳を迎え、少し衰え、今は日々を充実したものであるように、よく月くんを見ていようと思っています。

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来年度の展覧会予定です。各地回りますので、お近くの際にぜひ彫刻になってくれたどうぶつたちに、会いに来てくださいね。
詳細は追って順にまたお知らせいたします。


2017~

三重県 喫茶tayu-tau 1/17-1/30 個展

神奈川県 今古今 2/15-2/24(二人展)

東京都 巣巣 3/24-4/2 個展

愛知県岡崎市こども美術館、4/22-6/25 個展

福岡県スピタル箱崎 (7月後半予定) 個展

静岡県weekend books 7/2-16 個展

東京都ギャラリーKISSA 8/11-9/10(三人展)

広島県三良坂平和美術館、9/16-11/5 個展

愛知県名古屋市ヤマザキマザック美術館11/24-2018,2/25 個展

2018~

山形県酒田市美術館 2018,3/10-4/22 個展

熊本県長崎書店(5月予定) 個展







# by m_kirin30 | 2016-11-27 19:37 | 日常

もうひとりの


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ちょうど彫刻と、自分の関係のように、彫刻家はしもとみおは、私の隣にいつもいます。
自分で立ち上げた作家業、彫刻家はしもとみお、というダメなほんとうの私とは違う別の仕事人間が、いつも私を励ましてくれます。
私自身は面倒臭がりで適当で、とてもダメダメな人間ですが、
彫刻家はしもとみお は、そこだけでもちゃんとしようと、
人見知りで外に出るのが億劫で大の苦手な自分ですが、仕事としての自分は、なんでもできるようになりました。人と関わることも、交渉することも、お金のやりくりも、ほんとうはどれも逃げ出したいくらい苦手ですが、仕事が自分を育て、鍛え上げてくれました。

ずっとずっと昔、美術をはじめたころから、このもうひとりの美術作家としての自分、はしもとみおが、私の斜め上にいつもいて、自分を厳しく鍛え、一番の理解者であり、指導者でした。
こんな絵ではいけない、その決断は間違っている、この彫刻は良くない、
判断を下すのは私ではなく、いつももうひとりの自分、彫刻家はしもとみおです。
私自身だけだと、もうやめちゃえ、とぐうたらの適当になってしまっていたと思います。

だけど、はしもとみおだけでは、ダメになっていたように思います。
時にぐうたらの自分が、ちょっと休もう、ちょっと遊ぼう、ちょっと逃げよう、と、
適度にはしもとみおを、休ましてきたおかげで、リラックスしてリフレッシュができたようにも思います。

今は自分の仕事、彫刻家はしもとみお は、自分とは全く別の人間で、
自分の作った会社やお店と同じで、大切な仕事であり、友人であり、大切な人生のほとんど全てです。
明日も明後日も、はしもとみおは仕事を頑張ることでしょうが、
オフの私は、コーヒー飲んでドライブして、リサイクルショップを巡ったり、大好きなお料理や犬の散歩、ゲームしたり漫画を読んだりアニメを見たり、それはそれはほんとうに、まったくの別の人間なのだと思います。
仕事でつらかったり苦しい時は、「がんばれ、はしもとみお」と、古い友人を励ますような気持ちで、もう一人の自分を心から応援しています。
おかしな話ですが、そんな感じで、もうひとりの自分は今日も仕事をし、私はこうやってナマケモノ日記を忘れたころに更新していく日々です。
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10/30
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すいどーばた美術学院さんで、10/30日の全国公開実技コンクール(彫刻科)を受けた学生さんがた対象に特別講演会をします、受験生時代の過ごし方から、デッサンの極意、作家起業へのあれこれなど、リアルにお話しします

11/23 エキサイトブログ企画 
 に作品展示、販売で参加します。




11/12~11/27 12:00~20:00  (グループ展示)
アーツ千代田3331 1F メインギャラリーにて、彫刻展示があります。


来年度2018年は、全国各地で美術館展示、個展、ワークショップ、彫刻販売と続きます、
また追って告知しますので、お近くの際はぜひ遊びにいらしてくださいね。









# by m_kirin30 | 2016-10-11 21:50 | 日常

木になる

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彫刻をしていると、単純なことですが、勇気というものがほんとうに大切なものだと感じます。
脳は、どんなに抗おうと思っていても、うまくいく方へ、楽な方へ、まとめる方へ、無難な方へ、失敗しない方へ、自分を誘います。
だけど感覚が、それにちゃんと反抗する、手がそれを争い攻めの一刀をきっちりと入れてくれる、それは勇気ある行動であり、自分の目を信じている真のデッサン力の表れでもあります。

自分の目を信じられることができたら、みんなと同じものを描いても、ほんとうに魅力的なものが描けます。
その人にしか発見できない美を描けるからです。
人と違ったこと、変わったことをして注目を得るのはある意味簡単ですが、人と同じことをしてあたらしい価値観を感じさせることのできる表現力は、とても難しく、素晴らしい発見でもあります。
普通のものをつくっているのに、飽きがこない、時代に流されない、そんな、「そこにしかない美」を作ることが、私の目標です。
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美術家は、いずれその扱っている素材のようになっていくような気がします。
木彫家は、性格そのものが扱っている木そのものになっていくのです。
木を毎日彫っているうちに、木そのものの性質に近づいていくような感覚に陥ります。
腰を据えて風に振れず、大きな幹を構え、じっと動かずじわじわと大きくなっていく、動物たちや虫たちに囲まれ、実り、枯れ、また育つ、そんな繰り返しが、今の私の日々ととても重なります。
画家は絵のように美しく静かな存在になり、
石を彫っている人はきっと石のように強くてたくましく、
土を触る人は大地のようにあたたかく大きく、
金属を加工する人は素粒子のように繊細でかつ大胆な動きをし、
木を彫る人はやがて木になる。
そんなことを、犬と散歩をしながら風景を見ていると感じる毎日です。

私は楠という木に支えられ、たくさんの勇気をもらい、自分の目でじっくりと観察した動物たちを届ける仕事をしています。
かつての彫刻家がまだ発見できていない美を、新発見するべく日々観察に明け暮れています。
三重県の片田舎に住んで3年が経ち、日々お庭のめまぐるしく育つ木々や虫たちの声に励まされて制作しています。
自分ほど、この世界が好きな人はそういないだろうと思うときがあるほど、この世界が本当に大好きです。そのことを言うのは、なぜか少し恥ずかしいのですが、もしかしたら木も動物たちも虫たちも、このことを思っているような気がしてなりません。
言葉でなく彫刻で、この大好きな世界の最愛のいきものたちを伝えていけたらと思っています。


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グループ展のお知らせです、

木彫りのどうぶつブローチを23個、展示販売します。

9月18日(日)~28日(水)ブローチ!ブローチ!ブローチ!3  weekend books



9月15日(木)~10月3日(月)「ペットショップにいくまえに」展 ウレシカ

ちいさな動物の彫刻たちを、展示販売と、等身大彫刻を少し展示します。


ちいさな個展のおしらせ、
10月9日
阿下喜秋の市 桐林舘 三重県いなべ市
大きなどうぶつの彫刻たちを、素敵な古い学校の中で展示します。

11月にまた東京でグループ展もあります、詳細決定次第おしらせいたします、
来年は美術館展示がいくつが控えており、いろんな地域で展覧会が開けると思います、
どこかの展覧会にぜひ、木彫りの動物たちに会いに来ていただければと思います。


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製作中のチグリス君(相島に住む野良猫)















# by m_kirin30 | 2016-08-27 19:10 | 日常

スケッチのすすめ

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目の前でモチーフを見ながら描くスケッチを、日課にしています。
スポーツ選手の方が毎日体を鍛えるように、美術家も日々目と手と感覚を鍛えることがとてもたいせつだと思いますし、自然をリアルに描く仕事なので日々自然界の研究を続けたいというのもあります。
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スケッチは、目の前に生き物、植物などを見られる状況で、描くようにしています。
想像上のものを描いたり、写真資料を見て描くことはしません。生の感動を定着させる技術を養う練習が、私なりのスケッチです。
写真を利用して描いてしまうと、写真は動かないものですし、色も固定、サイズも縮尺のものなので、過去の自分の技術の焼き増しにしかならないような気がします。仕事上写真資料から仕上げることはありますが、あくまで訓練としてのスケッチは、生のモチーフを見て行います。

動物たちはもちろん動き回るので、動体視力、記憶力、瞬発力、たくさんの力が身につきます。
自分にとっていちばん難しいことをつづけていく、習慣化していくことが、ほんものの技術を養うことにつながります。

そして続けていくうちに、ほんとうにたいせつなスケッチの不思議に近づいていきます。
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スケッチは、過去の技術を一切忘れることがたいせつだということに気がつきます。
過去の記憶も、すべて討ち払って、新鮮な脳でのぞみます。
羊は白い、植物は緑だ、そんな既成概念がいちばん不必要なものです。
ましてや、今日はこんな絵を描いてやろう、あの時うまくいったあの手段で描いてやろう、
そんな概念がいちばんの敵です。
過去の焼き増しを作っていっても、技術の向上は無く、それどころか、技術の固定化、癖の助長、感覚の停滞がおこり、絵はみるみる力と鮮度を失っていきます。

たいせつなのは、生まれたての生き物のような目で、この世界と向き合い、
はじめて絵を描いた時のような感動で、モチーフと時を共にし、観察することです。
手と目と感覚をリラックスさせ、深く呼吸し、まず目の前のモチーフが美しく見えているかを確認します。
「ああきれい」と思ったらすぐ、筆を走らせます。
下書きも必要ありません、失敗はいくらでもしていいので、どんどん筆を置いていきましょう。
生でモチーフを見て描くことの何がいいかというと、失敗ができるということだと思います。
失敗を克服していくことこそが技術の向上で、どん底から這い上がって培ったほんものの一枚は、うまく仕上げた1000枚より、価値のあるものです。

その経験値を、100枚、1000枚、10000枚と重ねることにより、
どのような状態でも失敗などなく、成功に導けるのだということ、
自分の絵の最底辺を底上げできることにつながります。
安定した、いつも 「いい絵」が描けるようになるスケッチ力は、その他の仕事もおおいに助けてくれる存在になります。
あらゆる分野のプロフェッショナルというのは安定力そのものだとも、思うからです。

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たくさんのまだ見ぬ美しさを発見して、世界の美しさを伝えて届けていくのが、私の仕事です。
死ぬ時に誰よりも、この世の美しさを発見した人間でありたい、そう思っています。
何万枚ものスケッチを残して、生涯を終えられたらと思っています。


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この夏〜秋の展示会は、主にグループ展になります



2016年7月23日、24日特別展示

いきもの達のかくれんぼ展 きりん工舎 三重県

場所:きりん工舎内展示スペース 入場無料

日時:2016年7月23日(土曜日)10:00~18:00 ※木彫りのワークショップ同時開催

7月24日(日曜日)10:00~16:00

日曜日は閉館時間が早いのでご注意ください。

・あまのじゃくとへそまがり ・蛾売りおじさん ・柴田 望・はしもとみお・馬場 稔郎・本多絵美子

・宮本 祐太・新井 達矢


ブローチ!ブローチ!ブローチ!3
*日時 9月18日(日)〜28日(水) 23日(金)定休日
*場所 weekend books

グループ展示になります。販売用ブローチをいくつか出品します。

「ペットショップにいくまえに」展
2016年9月15日(木)~10月3日(月)
グループ展になります 販売用彫刻、展示用彫刻を出品します。
ウレシカ



特集記事も書いていただきました、ぜひご覧ください。

IT WALL
# by m_kirin30 | 2016-07-05 18:40 | 日常