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木を彫る

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彫刻には、大きく分けて2つの種類があります。

モデリング  (粘土などを盛り上げて作っていく手法)
カービング  (彫り下げて作っていく手法)

私の行っている木彫は、木を彫り下げて作る、カービングです。
木彫は、厳しい意思が必要になってきます。
カービングのしごとは決断なので、心にブレがあると進みません。
目標の形を見出したら、ある程度のスピードで一気にその形まで彫り下げていきます。

迷いながら行うカービングの仕事は、ある意味地獄です。
その形を、「失わせる」か「とどめる」かの2択しかないからです。
それなので、すべての仕事が最後の面になるかもしれないという覚悟をもって、仕事を進めていきます。
わたしはそんな、彫刻の持つ、はりつめた緊張感が好きで、
そんな厳しい苦しみの選択の中から、うまれたかたちがとてもあったかいものであったとき、
言葉にできない、愛おしさが彫刻にこみあげてきます。

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木を彫っているときいつも、最高の決断ができるよう、心がけています。
最善をつくしたその結果が、いまのかたちであるように、
最高の形を、見る人に届けられるように、
それは実はとても難しいことですが、いまのひとときを集中して、一刀をいれて、なにかを捨てて、なにかを残していく、彫刻家の一番たいせつなしごとです。

そうおもえば、最高の形は、すでに木の中にあるということです。
始まる前には、最高も最低も、すべて埋まっていて、
そこに向かう途中に、苦しみの中で、最高にたどり着くのをあきらめてしまわないように。
こころを彫刻のようにしっかりと、重力に自立させておく訓練のようにも思います。
「この仕事をつづけていると、そのうち自分が彫刻になってしまうよ」
と、ふと、思いました。わたしはそれで本望です。

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夜中のアトリエに用事で入った時、普段見る昼間の顔とちがう彫刻たちが、そこにはいました。

「一本の木にも流れている血がある
 そこでは血は立ったまま 眠っている」

といった、寺山修司さんのきもちが、そのとき分かるような気がしました。
彫刻たちは、立ったまま、眠っていて、そこには血が流れている。
どうか私よりも、彫刻たちの方が、長く地球で過ごせますように、たくさんの私の知らない人たちに出会えますように。


2月21~ 東京 巣巣 ミニ展示&ワークショップ

3月20~ いなべ市フェア  展示会 ワークショップもあります

4月4~5 アニマルクリエイターズカーニバル 展示会  ワークショップもあります。

5月16〜 東京 ギャラリーキッサ 個展


上記以外にも進んでいることがいくつかありますので、詳細決定次第またアップしていきます。
お近くの展覧会の際にぜひ彫刻たちに会いにきてくださいね。
# by m_kirin30 | 2015-02-22 13:25 | 日常

まるごと




ものをつくることは、いつのときでも自分を助けてくれました。
どのような時でも手には道具を持ち、なにかを作っていることで暮らしてきました。
ものづくりをすればするほど、自分の弱さと、甘さに気付かされます。
つくり手も人間なので、完璧や正確にはいかない、
だからこそ、自然の完成された美しさに、ひどく感動するのでしょう。

わたしは苦しい時や弱っている時、いつも動物たちや自然の美しさに助けられます。
どんなにつらくても空が美しくみえたり、生き物がかわいくみえたりすると、
自分のこころがまだ、大丈夫だ、と思うことができます。
誰かが作った優しい音楽をきいて、涙が出るように、
美術も、だれかにとってそういうものでなければならないと、深く感じます。
芸術は、ほんとうは、優雅で満たされている者たちの友ではなく、くるしいものたちの、弱いものたちの友達で、ほんとうの昔から人は、芸術にこころを求めて、つくったり大切にしてきたんだと、そう思います。

私は彫刻に、現実の幸せだけでなく、哀しみをいつもちゃんと作りたいと思っています。
生あるものの中にすでにある死を、ちゃんと作りたいと思っています。
哀しいもののなかにある、ちいさな幸せや美しさが、
ほんとうに美術を必要としている人たちの、味方になってくれるような気がするからです。
まるごとを、ちゃんとつくれる作家に、なりたいと思っています。

いつのときでも、そのことを忘れないように、
誰かにとって友達になれるような、そんな彫刻を作っていけたらなと思っています。




12月に、福岡県相島というところに猫の取材に行ってきました。
猫の島、とてもすてきな日本の風景に出会えて、今年は猫の彫刻がどうやら増えそうな予感です。

2015年度の展覧会はすでにいくつか決まっていて、

1月24日 NHK文化センター青山教室  木彫り教室



2月8日 NHK文化センター梅田教室 木彫り教室

はしもとみおと作る動物の木彫りワークショップ
ワークショップ 2/28、3/1
2/21~3/1 はしもとみおの作品のsmall展示  会場 巣巣 東京

3月20〜23日 いなべ市フェア 東京 参加

5月16日〜6月20日  はしもとみお個展「旅する彫刻」   東京 gallery kissa 

8月後半 〜9月前半 大阪 けんちくの種  2人展

雑誌掲載予定 
シーバ  天然”猫”生活 MOEなどなど


2015年も、引き続きオーダーいただいている彫刻の製作と、なるべく多くの土地で展覧会を開きたいと思いますので、お近くの際遊びにいらしてくれたらと思います、今年もよろしくお願いいたします。








 
# by m_kirin30 | 2015-01-03 11:19 | 日常

小さい頃

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彫刻をはじめるきっかけになったのは、ずいぶん昔にさかのぼります。
小さい頃から、本当に生き物が好きでした。
はじめて犬を飼ったのは9歳のとき、ゴンくんと名付けたその犬は、ほんとうにかわいくて、でも生後数ヶ月も立たないうちに病気で死んでしまいました。
私は悲しくて、獣医さんになってゴンくんのような子を助けたい、とおもい、それから生物学にとても興味がある事もあって、理数系のある中高一貫の学校で理科の勉強を中心にがんばっていました。
絵も音楽も好きでしたが、芸術を仕事にしようとはそのころまったく考えてなかったように思います。
大きく変わったのが、中学のときにあった、阪神大震災でした。
私のおうちはぼろぼろになり、近所の通学途中好きだった犬や猫も姿を消し、
大好きだった景色や、大好きだった動物たちが、ある日ふっと、なくなる。そんな経験をしました。

そんなときに、思い出したくても、思い出せない、触れたくても、二度と触れられない、
その悲しさから、形あるものがいかに美しいものだったのかを、深く考えるようになりました。
どれほど美しかっただろう、どんな手触りだっただろう、
失ってしまった命を、医学で取り戻す事は不可能だけれど、
彫刻という力を借りて、その姿を残す事はできる。
私は、動物たちの、そのままの形が大好きだったのです。

だけどいざ美術の方面で仕事をするとなると、私にできる事は一体何かを考えて、
最初は、絵でその美しかった動物たちの姿を残せたらいいなと思っていました。
けれど描くうち、2次元ではもの足りず、同じ3次元にかつてとおなじ存在感でその子がいたら、どんなにいいだろうと思うようになりました。
みるみる、「彫刻」というものに、私は取り付かれて行きました。

失った形を取り戻す、そんな事なんて、人間の手にはとうていできない事なのでしょう。
形あるものは、失われるからこそ、美しくもあるのでしょう。
私は彫刻で、命を吹き込んでいるとかそんなふうに思った事は一度もありません。
命はもう既に木の中に眠っていて、モデルのその動物たちが、「私を思い出して」といっているような気がして、制作しています。
あの時の、あの表情、あの一瞬を思い出して、それを形にする、
デッサンにデッサンを重ね、15年もの訓練を経ても、いまなお制作は難しく、うまくいかないたびに、落ち込んだりもします。

最初は私が出会った個人的な動物たちを残していましたが、
いまでは、多くのかたのたいせつないきものの家族の姿を、彫刻にする仕事を続けています。

とても難しく、責任の重い仕事ですが、私があの震災の後おもった、
「あの子は、あの子がいる景色は、どれほど美しかったことだろう」の思いが、
私を迷わせる事無く正しい方向へ、動物たちが導いてくれているように思います。
かつて生きていた美しいものたちから、これから生まれてくるであろう美しいものたちへ、
彫刻を通して、伝える仕事を、生涯続けて行けたらなと思っています。

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10月末には、福岡へ動物たちが旅をしてきました。
銀行という人間ばかりの場所が、あるひ動物たちの森になっちゃった、という企画で、
たくさんの方が彫刻のどうぶつたちに触れていただきました、
ありがとうございました、
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現在ユニクロのヒートテックのCMに出演させていただいています。
話している内容は、彫刻家が古代から大切にしてきた感覚のはなしです。
またテレビでチラッとみたら、彫刻という世界の事を思い出していただけたらと思います。



現在開催中の展覧会
11月12日~12月14日 滋賀県永源寺図書館 視聴覚ホールにて「本の森の動物図鑑」
近所の永源寺の紅葉がとても綺麗です。ゆったりとお時間を取って、関連する本と彫刻をみていただける展示になっています。お休みの日をご確認の上お越しいただければと思います。


11月29,30日、大阪、心斎橋にて ボダイジュエキスポ3に出品します。
ホテルの一室を、今回はアラブのはなももさんとコラボして、はなももワールドを展開します。
ガゼル、ハト、猫、犬、ラクダ、、、たくさんの動物たちに、ぜひ会いに来てくださいね!












# by m_kirin30 | 2014-11-24 16:43

友人



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いつのときでも、最善の仕事ができるように準備をしておきたいと思っています。
彫刻のしごとを始めようと思ったとき、彫刻のためなら、なんだってできるとおもいました。
彫刻をするための場所、音を出してもいい環境、制作、運送のための設備投資、
あらゆるものをととのえて、おおきな仕事のために備えようと思っています。

いつでも、自分を磨いておきたいと思います。
どの面でも、自分を磨いてくれるのは、自分自身しかいないように思います。
いくつ年をとっても、自然から何かを学び続ける、学生でありたいと思っています。
きたるべき際に備えて、日々自分の技術を高めて行けたらいいなと感じています。

大学時代からの友人が、こんなことを言いました。
仕事は、自分を裏切らないね
この言葉は、仕事に人生を費やして来た人なら、共感できる言葉のように思います。
彼女も私も、大学を卒業してから一心に仕事だけを続けてきました。
彼女はコーヒー焙煎師になり香川でプシプシーナ珈琲という珈琲豆屋を営んでいます。

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いつのときでも、仕事を友人のように思っています。
大切に、いつでも思いやりながら、育てて来た仕事は、私たち個人事業者にとっては何よりも大切な存在です。
いつのときでも、仕事に誠実に、ひとつひとつをていねいに、続けて行きたいと思っています。
自分を磨くというのは、仕事という友人のためでもあるのでしょう。
日本では仕事に忙殺され、仕事が嫌な人や、月曜日が憂鬱な人がいるのかもしれませんが、
私は仕事が好きです。
社会人として生きて行ける事に誇りを持っています。
それなので子供の頃より、今の方が楽しいです。
自分の稼いだお金で食べた最初のご飯のことを、私は忘れた事はありません。
仕事が無くてもうどうしようもないときに、注文をいただいた時の感謝を、忘れた事はありません。
仕事とともに成長し、いつでも自分を鍛え上げてくれたものは仕事でした。
そして仕事をともにする仲間たち、そのすべてをまるごと、笑顔にできるように、今日も精進したいと思っています。



今週末はヤネウラット森の文化祭
こちらはまだ若干名空きがあるようなので、この機会にぜひ、自然の中で木彫り体験を楽しんでくださいね。


きたる10月30〜11月2日
福岡銀行本店 「どうぶつたちがやってきた!」
福岡県 福岡銀行本店に、たくさんの木彫りのどうぶつたちが迷い込みます。
受付や、入り口付近、本館前広場!?
等身大のどうぶつたちから小さなどうぶつまで、たくさん迷い込んでいますので、ぜひどうぶつたちとお友達になりにきてくださいね!


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# by m_kirin30 | 2014-10-21 15:39 | 日常

職人

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感動は、自分の感覚の外からやってくるものです。
目の前のモチーフを見て、描くという事を大切にしています。
写真資料をもとに作成する事も多いですが、
ほんとうのところは実際に自分で取材をして、デッサンをして、彫刻を制作すると、
いちばんいい彫刻ができるように思います。
それは、自分の中にぐるぐると動くその動物の3次元の記憶が宿り、呼べば今にも、その子に触れる事ができるような感覚が残っているからです。
時を共にした記憶というのは、深く強く、脳裏に刻まれます。
人間にまつわる事はほとんど覚えられない私ですが、出会った動物たちに関しては忘れる事はありません。

この世界で、一番の願いは、死者にもう一度会えることだと、いつも思います。
それはもちろんかなう事は無く、時はいつも一方通行だからこそ、生き物は美しく、移り行くものはみないとおしい存在になるのでしょう。
そんな中で、いなくなってしまった命に、もう一度触れたいという思いから、彫刻で動物を作る仕事をしています。
現実にはかなわない願いなのですが、彫刻になったその子に、もう一度触れる事で、思い出すことができるたくさんの愛情があります。
私が生きている間に、ひとりでも多くのそのままの美しい姿を、彫刻に残せたらと思うので、
私の仕事は生涯そこから変わる事はありません。

芸術家、表現者、アーティストと呼ばれる人たちは、私の事を認めないかもしれません。
私には、表現というものはなにもないからです。
ただ単純に、どこまでもリアルに、温度のある彫刻を作る事だけに生涯を費やして行きたいです。
この仕事には表現や個性的であろうとする事が挟まってくると、現実が曲がってきてしまいます。
ただ目の前の真実を受け入れる、おおきな器のようなものになって、
現実を、一つ残らず受け止めておきたいと思います。
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私にとっては夢も、奇跡も、感動もすべて現実の中にあります。
そのままの美というものを、残せる最高の職人になれたら、自分の一生は十分だとも思います。
あれもこれもとやりたいことはあっても、こなせることは極わずかなので、この一つの事だけを続けて行けたらなと思っています。

職人というのは、コントロールができる器だと、聞いた事があります。
ものづくりというのは、毎日同じいいものを作るために、実は毎日すこしづつ違った事をしていかねばならないと。
それは、時が経過する事で昨日とは条件がすべて違ってきてしまうからです。
自分の技術の向上、環境の変化、気温、湿度、体調、素材の変化、日々あたらしい条件下でまた、職人は昨日以上のクオリティのものを必要とされます。
技術の向上と平行して感覚も鍛えて行かないと、とたんにものに力は失われて行きます。
どんな環境下でも、美しいものを見つける目を養い、現実を嘘無く作り上げる職人に、なっていきたいとおもいます。


今月末は、東京 もみじ市に参加します。
もみじ市の、猫のブローチワークショップのための見本のはずが、ブローチを30個程制作できたので、会場で限定販売を行いたいと思います、
ワークショップも、ぜひこの機会にご参加ください!
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東京 もみじ市 多摩川河川敷にて開催 9月27日 28日

ワークショップ受付はこちら

10月25日 三重県いなべ市で、ヤネウラットのお化けパーティー に参加します。
森のなかの別荘のような場所で、お化けの木彫りをつくるワークショップもありますので、ぜひ遊びにいらしてくださいね!

10月末、福岡銀行さんで彫刻の大動物園をひらく予定です。

その他、年内ワークショップ、展覧会まだまだありますので、お近くの際はぜひ彫刻の動物たちにふれあいにいらしてくださいね。
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写真は 東京 巣巣さんでひらかれた眠り猫のワークショップの完成画像、みなさまのにゃんこ、すばらしいです!































# by m_kirin30 | 2014-09-13 08:00 | 日常